ある日突然「海外赴任」に困惑

海外赴任人材を潰してしまう企業の共通点「海外で活躍したい」という気持ちを維持させることが重要

 海外でビジネスを展開していくため、今、多くの企業でグローバル人材の育成の必要性が叫ばれており、多くの企業がグローバル人材の獲得や育成に力をいれいます。

 ところが、「いつか海外で活躍したい」と夢を語っていた新人を採用しても、会社でしばらく仕事をしているうちに、そのマインドを失ってしまいます。実務担当者の時期に、グローバルなマインドを失ってしまっているのです。

 こうしたことはなぜ起きるのでしょうか? 私はこの現象を「実務担当者 グローバル気枯れモデル」と命名しました。

「気枯れ」とは、「穢れ」の語源となっていると言われている言葉ですが、文字通り、気が枯れる、エネルギーが弱くなっている、といったことを表しています。どういうことかご説明しましょう。

 今の若者たちは学生時代から、ことあるごとに「海外でも活躍できるグローバル人材を目指しなさい」という言葉を浴びせられながら育っています。実際に将来、海外で活躍できるようにと、短期、長期の留学を経験したり、語学学習に励んだりしている学生も多くいます。

 就職活動の時も、採用担当者や経営者から「みなさんには世界を目指してほしい」「グローバル人材を積極的に採用したい」などといった熱いメッセージを送られ、希望をもって入社します。

 入社後も、新人から若手の間は、「海外で活躍する」ということを意識させるような研修が行われ、「いつか海外で活躍する」という熱い気持ちを持ちながらも、国内で実務担当者として、地道な実務経験を積んでいきます。

 ところがその後、かなり長い期間、海外の「か」の字も出なくなる時期が続きます。現場のマネジャーに「海外」などという話をしようものなら、「君って意識高いんだね」「夢見てないで、目の前のことをやって」と、一蹴されてしまいます。

「もう、海外勤務の夢など忘れよう」、そう諦めて、続けていた語学の勉強も止め、マイホームを建てたところで、ある日突然、「1ヵ月後にインドネシアに行ってくれ」といった内示が降ってくる。「今の仕事の引き継ぎもあるし、家族のこともあるし、気持ち的なところもいろいろ準備不足……」、そのような状態のまま渡航することが不適応につながってしまう、という現象です。