アマゾン・ドットコムの子会社である「アマゾン・ウェブ・サービス」(AWS)は、世界最大のビジネス向けコンピュータインフラ事業である。2006年にこのサービスを立ち上げたアンディ・ジャシーCEOが3月に来日し、日本の顧客企業、パートナー企業を訪問。日本市場のさらなる拡大にも手ごたえを感じている。なぜAWSは強いのか、そして今後の注力分野を聞いた。
クラウドという“重力”には
誰も逆らえない
――まず、AWSの現状についてお聞かせください。
アンディ・ジャシーCEO(以下・黒文字)AWSの売上高は今期のランレート(通期予想)が140億ドル(=約1兆5000億円)に達すると見ています。すでに非常に大きいだけでなく、毎年50%の成長を遂げています。クラウドインフラ事業の分野でAWSは、2位以下のベンダーすべてを足し合わせても、その数倍の売り上げ規模となっています。
すでに世界中で、多くの企業がすでに採用いただいているのですが、実は、世界各国の政府をはじめ、まだこれからAWSを採用するという企業や機関が非常に多いということを忘れてはいけません。つまり成長はまだまだこれから加速するのです。
――2004~2005年ごろ、アマゾンが自社のECサービスのインフラを短時間で構築できるように作った仕組みがAWSの原点だということですが、なぜ、このサービスでAWSが先行できたのでしょうか。
大手ITベンダーをはじめ他社でも、こうしたサービスは検討していたはずです。ただ、他社はこの市場はそれほど大きくならないだろうと懐疑的に思っていた時に、我々が本格的にスタートを切り、一貫して投資を拡大してきました。現状で他社より6~7年先行しているという認識ですが、私自身、ここまで差をつけることができるとは思っていませんでした。
――どうして他社は、出遅れただけでなく、追いつけないのでしょうか。
AWSと他のプロバイダーとの間には、かなり大きな違いがあります。まず、多と比べて我々はすでに非常に多くのサービスと機能を持っています。同時に、他社に先駆けて急速にイノベーションを遂げています。昨年、我々は1016個もの新しい重要な機能をAWSに追加しました。それはすべて、顧客からの要望に応えていくためです。1日平均3つの機能が新たに用意され、選択可能です。
機能の追加は日々加速しており、ますます他社との差は開いていくと思います。これによってあらゆる企業は、現在のビジネスアプリケーションをクラウドに移すだけでなく、新しい付加価値を得ることができます。
2つ目のアドバンテージは、AWSにはすでに非常に大きな「エコシステム」ができています。具体的には、開発パートナー、アプリケーション開発会社、そして顧客企業のユーザーのネットワークです。多くの主要な開発パートナー企業がAWSへの知識を深めていただいているおかげで、クラウドへの移行という大きな転換期に、顧客企業が既存の開発会社に安心して相談できる状況が生まれています。
3つ目は、AWSは先行しているため成熟度が最も高いことです。我々は他社よりも大きなスケールで仕事をするノウハウを持っています。