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AIエージェント時代の到来で、世界はかつてない「計算能力争奪戦」に突入している。その中心に立つのが、AI半導体で圧倒的な存在感を誇る米エヌビディアだ。最高経営責任者(CEO)のジェンスン・フアン氏は、台湾・台北市の講演で、最新のAI半導体を搭載した次世代サーバーが「フル生産」に入ったと宣言した。果たして、エヌビディアは急拡大する需要に応えられるだけの供給体制を築けるのか。特集『AI産業戦争 米中覇権に呑まれる日本』の#15では、巨大化・複雑化するエヌビディアのサプライチェーンの実態に迫る。(ダイヤモンド編集部 村井令二)
AIエージェント時代の本格到来で
エヌビディア「ベラ・ルービン」に巨大需要
「生成AIが進化して、エージェント型AIはすでに実用段階に入った。ベラ・ルービンはフル生産だ」
6月1日、台湾・台北市で開かれたアジア最大級のコンピューター見本市「COMPUTEX(コンピューテックス)台北」に合わせて開いたイベントの基調講演で、米エヌビディアのジェンスン・フアン最高経営責任者(CEO)は、そう宣言した。同社のAI半導体を搭載した最新のAIサーバー製品「ベラ・ルービン」の生産がフル稼働に入ったことを明らかにしたのだ。
エージェント型AIは、入力された質問に答える従来の対話型生成AIとは異なる。利用者の意図を理解し、自ら情報を収集・分析した上で、計画の立案や実行まで担う。文字通り、代理人のような役割を果たすAIを動かすためには、大規模言語モデル(LLM)の推論より、はるかに多くの計算能力を必要とする。
すでに世界各地で巨大なAIデータセンターの建設計画が相次いでいる。
こうした需要拡大を追い風に、エヌビディアは現行製品「グレース・ブラックウェル」の出荷が拡大し続けており、快進撃は止まらない。その上で次世代製品のベラ・ルービンは、現行品に比べて「推論性能5倍、処理コスト10分の1」という圧倒的なパフォーマンスを備え、2026年後半の本格出荷が予定されている。
講演会場となった台北流行音楽センターを埋め尽くした聴衆の多くは、台湾企業のサプライチェーン関係者だ。フアン氏が「フル生産」を宣言すると、会場に歓喜の声が巻き起こり、カリスマCEOの存在感を改めて印象付ける場面となった。
一方で、フアン氏は「ベラ・ルービンはこれまでに設計された製品で最も複雑なシステムだ」とも指摘。新製品のために構築したサプライチェーンは現行のグレース・ブラックウェルの2倍の規模に達するという。そのネットワークは、世界30以上の国と地域で350以上の工場に広がり、台湾だけでも150社以上が関わる。
6月2日のコンピューテックス開幕式では、頼清徳・台湾総統が登壇し、「台湾海峡の平和と安定を断固として守り、現状維持に尽力することこそ、世界のAIサプライチェーンを守るために台湾が果たすべき責任だ」と訴えた。
エヌビディアの台湾への依存が一段と強まる中、台湾総統自らが地政学リスクの払拭に努めた格好だ。
果たしてエヌビディアは、この巨大かつ複雑なサプライチェーンを管理しながら、エージェント型AI時代に爆発的に増加する計算需要に応えることができるのか。次ページでは、エヌビディアのサプライチェーンのリスクの実態に迫る。







