地銀再編サバイバル 売れ残り回避の最終戦 #4経営統合に関する基本合意書を締結したあいちフィナンシャルグループの伊藤行記社長(左)と三十三フィナンシャルグループの道廣剛太郎社長 Photo by Go Takano

3月にしずおかフィナンシャルグループと名古屋銀行、5月にあいちフィナンシャルグループ(FG)と三十三フィナンシャルグループ(FG)が相次いで経営統合で基本合意し、東海エリアでは再編ドミノが止まらない。その背景にあるのが、ありあけキャピタルによる同エリアでの相次ぐ株式買い増しと、あいちFG・三十三FG連合のさらなる拡大志向だ。再編の波は近接する近畿エリアにも及び得るが、最大の焦点は岐阜県の十六フィナンシャルグループと大垣共立銀行である。長期連載『金融インサイド』内の特集『地銀再編サバイバル 売れ残り回避の最終戦』の#4では、両行の再編を阻んでいる「壁」と、それでも東海再編が止まらない理由を明らかにする。(ダイヤモンド編集部 永吉泰貴)

あいち・三十三連合は「信金再編」も視野
岐阜2行に迫るファンドと金融庁の再編圧力

 地方銀行「大再編時代」の号砲が、全国で鳴っている。

 中でも再編機運がひときわ高まっているのが、東海エリアだ。3月にはしずおかフィナンシャルグループ(FG)と名古屋銀行、5月にはあいちフィナンシャルグループ(FG)と三十三フィナンシャルグループ(FG)が、相次いで経営統合に向けた基本合意を発表した。いずれも県をまたぐ越境再編であり、東海の地銀地図は一気に塗り替わっている。

 もっとも、東海3県(愛知、岐阜、三重)の地銀再編は、簡単には進みにくい構造がある。

 このエリアには総資産4兆~7兆円台の中堅行が多く、圧倒的な盟主がいない。そのため統合時に明確な上下関係をつくりにくく、持ち株会社の本社所在地やトップ人事、さらには会見の仕切りをどちらが担うのか、細部の調整まで神経を使うことになる。力関係が見えにくいからこそ、統合交渉は一筋縄ではいかないのだ。

 この構造を揺さぶったのが、地銀株を中心に投資するファンド、ありあけキャピタルだ。

 ありあけキャピタルは、地銀再編の“仕掛け人”として知られる。2025年1月に投資していた千葉興業銀行の議決権比率を19.9%まで高め、同年3月には保有株を千葉銀行へ売却。両行の経営統合の呼び水となった。

 そのファンドが次に照準を定めたのが、近畿・東海エリアの地銀だった。25年10月には、あいちFG株の大量保有が判明。さらに東海では百五銀行と大垣共立銀行、近畿でも滋賀銀行や池田泉州ホールディングスの株を大量保有している。あいちFGはファンドの影響を否定するが、結果的には三十三FGとの経営統合に踏み切っている。

 そして早くも次の再編の芽として浮上しているのが、岐阜県の十六フィナンシャルグループと大垣共立銀行である。

 ただし岐阜2行の再編には、高い壁がある。

 大垣共立銀行は土屋家の同族経営色が強く、統合後の意思決定を考慮すると他行が踏み込みにくい。5月15日には、1993年から2019年まで26年にわたり頭取を務めた故土屋嶢氏の長男、土屋諭氏が取締役専務執行役員に昇格する人事を公表した。46歳での異例のスピード出世に、地銀関係者からは「このタイミングで同族色を強められると手を組みにくい」との声が漏れる。

 もう一方の十六銀行は、1877年創業の第十六国立銀行を起源とする全国16番目のナンバーバンクであり、創業時の名を受け継ぐ現存最古の銀行としての自負が強い。別の地銀関係者は「十六銀行はとにかくプライドが高く、大垣共立銀行とは長年のライバル関係にある。いずれも経営統合に踏み切るのは容易ではない」と話す。

 それでも、岐阜2行のいずれかが経営統合に動くのは時間の問題だろう。東海では名古屋銀行、あいちFG、三十三FGが相次いで統合に踏み切り、存在感を高めている。様子見を続ければ、組む相手は減る一方だ。

 加えて、あいち・三十三連合は拡大意欲を緩めておらず、足元ではファンドに加えて金融庁の外圧も強まっている。こうした状況を踏まえれば、東海の再編ドミノがここで止まるとは考えにくい。

 次ページで東海・近畿エリアの最新の地銀勢力図を公開し、あいち・三十三連合の拡大野心が信用金庫にまで及んでいる実態を解き明かす。そしてファンドや金融庁が突き付ける、容赦ない再編圧力の全貌をお届けしよう。