「最適解」はコンピューターも試すまでわからない
「巡回セールスマン問題」をご存じでしょうか。
「ある都市を出発したセールスマンが、複数の都市を1回ずつ訪問して出発地点に戻ってくるとき、移動距離が最短になるルートを求めなさい」
この問題は、数学的に見ると想定できるルートがあまりにも多く、コンピューターでも完璧な最適解を求めるのは難しいとされています。
ところが、実は簡単に正解に近づく方法があるのです。
まずはデタラメでいいので、すべての都市を回るルートを一つ決めます。
そして、「これよりも移動距離が短いルートを探す」というプログラミングでコンピューターに何度か計算させると、かなり正解に近いルートを瞬時にはじき出せます。
ここから言えることは二つです。
一つは、あらゆる可能性がある中で最も良い答えを見つけるのは、コンピューターでさえ難しいということ。
そしてもう一つは、ゼロから正解を見つけるのは困難でも、とりあえず仮説を立てて、「より良いものは何か」を試していくことが、結局は最短で答えに辿り着く唯一の方法だということです。
ビジネスの世界で起こっていることは、「巡回セールスマン問題」の設定よりも、はるかに複雑です。
市場環境や顧客ニーズ、競合の動きなど、さまざまな要素が絡み合い、それぞれが常に変化し続けています。
その中で、何が本当に正しい答えなのかを最初から見極められる人は誰もいません。
天才的経営者といわれる孫社長でさえ、先のことはわからないのです。
だからこそ、考えつく方法はすべて試してみて、少しずつより良い方向へと改善し、正解へと近づいていくしかありません。
一見すると遠回りのようでいて、これがゴールへ最短で辿り着く近道なのです。