「仕事が進まない」「今日も残業だ」「結果が出ない」……こうした問題を、すっきり解決してくれる手法がある。PDCAを超スピードで回す「高速PDCA」だ。ソフトバンクでは6万人超の社員がこの手法を使い、わずか三十数年で8兆円企業を誕生させた。
それはどんな仕組みなのか? 複合コピー機の営業マンを例に、9年にわたり孫社長の右腕として活躍した元ソフトバンク社長室長・三木雄信氏の話題の新刊『孫社長のむちゃぶりをすべて解決してきたすごいPDCA』から一部抜粋して紹介する。

もしも新人営業マンが高速PDCAを使ったら

 高速PDCAがどういう仕組みなのか、もう少しイメージがつくように、今度は営業の仕事で説明してみます。

 まずは、次に紹介する新人営業マンが、なぜノルマを達成できなかったのかを考えてみてください。

 あるコピー・FAXの複合機の営業代理店に入社した新人がいます。彼はそれまで営業経験が一切ありませんでしたが、入社翌日から営業を始めました。

 上司から課されたノルマは、月5件の契約獲得。見込み客のリストを数枚渡され、上から順に電話をかけて、アポがとれた相手を訪問するように指示されました。上司からのアドバイスは、「とにかく頑張れ。何事も経験だ」のひと言だけです。

 それから1ヵ月間、新人はひたすら電話をかけ続けましたが、電話がつながらなかったり、相手と話が続かずにすぐ切られてしまったりして、アポを2件とるのがやっとでした。それでも何とか契約をとろうと、アポがとれた2人を訪問したものの、結局1件も契約できずに終わりました。

 この新人がノルマを達成できなかった理由は何だと思いますか?

「新人でまだ経験が浅いのだから仕方がない」

「教えられた通りにやってできないのは、彼の能力不足かも」

「上司の指導方法が悪かったからだ」

 確かにそうした要因がないとは言いませんが、果たしてそれだけでしょうか。この新人が3ヵ月、6ヵ月と経験を積んでいけば、いつか月5件のノルマを達成できると思いますか?

 私はできないと思います。

 ソフトバンク的な視点から見ると、その原因ははっきりしていて、この新人がノルマを達成できない理由は次の三つに集約できます。

 1.何も考えずに電話をかけている
 2.毎日の結果を記録していない
 3.自分の仕事を数字で把握していない

 要するに、以前紹介した「ソフトバンクの三原則」と真逆をいくような行動をしているわけです(第1回参照)。そして多くの人が、現実にこうした働き方をしている。そのためになかなか成果を出せずにいるのだと、私は気づきました。