大地震という異常な状態で表れた二人の行動は、彼らの本性だったとはとうてい思えません。異常な状態では、異常な行動をするのが人間というものだと思います。

高揚していた自分から日常の自分に戻ることは決して悪くない

 震災によって、価値観が変わったと主張する人が数多くいました。

 自然災害はいつ起こるかわからない。それに巻き込まれて、自分もいつ死ぬかわからない。だから、悔いのないように生きていこう。これまでの自分は間違っていた。個人的なことで思い悩むことはやめて、被災した人のために生きよう。

 なかには、いまでもそう考えている人もいるかもしれませんが、ゴールデンウィークを挟んでこころの落ち着きを取り戻し、震災前の日常に戻った人も多いのではないでしょうか。前々回、私は「ゴールデンウィークは現実逃避を」と書いたのは、このような状態に戻るべきだと思ったからです。

 むしろ、日常に戻るのが人間として自然な姿です。

 あれだけ前向きだった自分はどこにいってしまったのかと失望せず、日常に戻った自分を許す。自分が変われるチャンスだったのに、これほど酷いことが起こっても変われなかったと、自分を追い込まない。元の自分を許すということです。

 普段から自分の考えをコロコロ変えていた人はまだしも、普通の生活を送っていたビジネスマンが、何か一つのことをきっかけにして180度変わってしまうというのは、やはり危険だと思います。

 人間の本質は、どんな経験がしようと連続にしか存在しません。マイナーチェンジや小さな軌道修正を積み重ね、長い時間をかけて変わるのが人間のあるべき姿だと思います。

 震災前の日常に生活を取り戻した人が、いまは復興支援に役立っていないと思えたとしても、決してその人の価値が下がったわけではないのです。