生活に困っている人も義援金を出した震災後の被災者支援

 欧米には、昔から「ノーブレス・オブリージュ(富や権力には責任が伴う)」という言葉があります。チャリティーは裕福な貴族や王室の義務という考え方です。

 つまり、欧米人には「余裕のある人たちが困っている人たちに対して慈善の精神でチャリティーを行う」という精神が脈々と受け継がれているのです。

 一方、日本人の基本的な善意のあり方は、落語の世界で表現されてきた「長屋の助け合い」だと私は思います。

 裕福な人や身分の高い人が貧しい人や弱い立場の人に「施す」という善意よりも、むしろ、困っている人同士が助け合うという考え方です。

 その考えが如実に表れたのが、東日本大震災後の被災地への支援です。

 日本でも、ソフトバンクの孫正義社長が100億円、ファーストリテイリングの柳井正会長が10億円の義援金拠出を表明するなど、スケールの大きな「欧米型」の善意も多く見られました。

 しかし、それほど余裕があるとは言えない多くの人々がこぞって募金を行い、さらには生活保護を受けている人やアルバイトで糊口をしのいでいる人が、ギリギリの生活のなかから義援金をしぼり出すという姿が多く見られました。

 善意だからと言っても、ただでさえ苦しい生活がさらに厳しくなることは目に見えています。

「あなたもたいへんなのだから、気持ちだけでいいと思いますよ」

 そんな言葉をかけられても、彼ら、彼女たちはこう言います。

「自分が困っているからこそ、被災地で困っている人の辛い気持がわかるんです」

 おそらく統計には表れてこないと思いますが、今回の大震災における日本人の草の根的な支援者の広がりは、世界に誇れるものだと思います。