先月、ニューヨークとワシントンに出張してきた。FRB(連邦準備制度理事会)やIMF(国際通貨基金)を始めとした主要な経済・金融関係者約20人との面談を実施してきた。そこで感じたのは日本国内では分からない、トランプノミクスによって米国経済に対するマインドの方向感が“楽観的”へと変化したことであった。

 今年の経済、特に市場は「政治リスク」に左右されることを本コラムでも書いた。欧州がそうであり、米国もそうである(日本ですら森友学園の問題で政治リスクが顕在化している)。

 政治家である以上、選挙と直結する内政を重視するのは仕方のないことだ。トランプの内政の看板公約として挙げられているのは、オバマケアの見直し(医療保険制度改革法)、30年ぶりの大規模減税、そして1兆ドル規模のインフラ投資である。この順番で進めようとしているのだが、一つ目のオバマケアの見直しで躓いている。今後、本件については再度、修正案が提出され、5月あたりに可決されるだろう。減税については夏に下院、秋に上院を通過することになりそうだ。インフラ投資までは年内にたどり着けるかどうか、といったところである。

 内政政策が滞っているときは対外政策が強化されがちだ。米国第一主義の政策として、イスラム圏からの入国制限措置、貿易赤字の削減、そして米国内の生産の強化が図られている。このようにトランプノミクスの特徴の一つは、非常に分かりやすいということだ。しかし、早くもイスラム圏からの入国制限措置は難航している。一方、通商政策等は大統領令で制裁措置を科すことも可能である。海外との金利差から為替はドル高に推移していたが、貿易の観点からは、今後はドル安が望まれるようになってきている。

 トランプミクスを考えるときの最も大事な点は、中西部(白人)労働者を最も重視しているということだ。この層は従来の(金持ち重視の)共和党が票を稼げなかったところで、トランプが民主党から奪取し、彼の支持基盤となっている。この層の底堅い支持があるため、36%という低い支持率でも耐えられるともいえる。英国のEU離脱と同様に、危機的な「格差」がその根本原因にあるのである。そのため移民制限の強化は、今後もトランプが継続的にトライすると考える。

 昨年来の米国株価の動きも、こうしたトランプノミクスの動向に対する心理的な動きがベースとしてある。しかも株式などの米国市場の特徴は視点が短期的なことだ。トランプ大統領当選時には経済政策に対する不安があった。しかしその後、トランプ相場として上昇が継続されたのは、不安が株式への投資比率を下げていたので、その分の反動が続いていたことも一因だろう。