報道されなかったスティグリッツ教授「日本への提言」の中身Photo:首相官邸HPより

ノーベル経済学賞受賞者のジョセフ・E・スティグリッツ・米コロンビア大学教授は3月14日、経済財政諮問会議に出席した。資料は内閣府のホームページに公表されているが、マスコミはほとんど報道していない。なぜなのか。こういう場合、マスコミに不都合なことが多い。

「政府・日銀」が保有する国債を
「無効化」するという意味は

 スティグリッツ教授は、諮問会議での発言のなかで、政府・日銀が保有する国債を「無効化」することを提言した。政府・日銀が保有する国債を「無効化」することで、政府の債務は「瞬時に減少」し、「不安はいくらか和らぐ」と主張。また、債務を永久債や長期債に組み換えることで、「政府が直面する金利上昇リスクを移転」できるとしている。

 この「無効化」についてどう考えたらいいのか。

 これはスティグリッツ教授がわざわざ日本で語った重要な指摘であるが、残念ながら、ほとんどのマスコミでとりあげられなかった。というのは、経済財政諮問会議の事務局である内閣府でもしっかりと理解していないふしがある。日本のマスコミは役所が振り付けないと報道できないのだ。

 スティグリッツ教授提言の和訳資料は、内閣府が用意したが「無効化」と訳されている。ところが、スティグリッツ教授の書いた英文原資料では「canceling 」である。これは会計用語で「相殺」である。となると、何と何を「相殺」するかが問題になる。

 その前に、経済学者の思考法を確認しておこう。経済学者は、財政・金融問題を考えるとき、政府と中央銀行を一体のものとして考えるが、これを「統合政府」という。法的にも中央銀行は政府の子会社であるので、一般企業においてグループ企業は連結決算で考えるのと同じである。もちろん、この考え方は、中央銀行の独立性と矛盾しない。中央銀行の独立性とは、政府の経済政策目標の範囲内でその達成のためにオペレーションを任されているという意味であり、グループ企業が営業の独立性を持っているのと同じ意味である。