全米で話題沸騰中の21の睡眠メソッドを集約した、『SLEEP 最高の脳と身体をつくる睡眠の技術』。本連載では同書の中心的なメソッドを紹介していきます。食事、ベッド、寝る姿勢、パジャマ――。どんな疲れも超回復し、脳のパフォーマンスを最大化する「睡眠の技術」に注目です!

アイマスクでは光をふせげない

暗いほうがよく眠れるというのは周知の事実だが、この事実をフルに活用している人は少ない。寝室に光の類いがあると、睡眠サイクルが乱れる恐れがある。アイマスクを使ったとしても、100パーセント光が遮られることはほとんどない。

皮膚にも光を感知する受容体が存在することはご存じだろうか? 目の網膜にある光受容体とよく似ているので、実は皮膚にも光が見えていると言えるのだ。ブラウン大学の研究チームにより、皮膚の細胞がロドプシンをつくることも確認された。ロドプシンは、網膜で光を認識する物質だ。寝室に光があると、身体はそれを感知して脳や臓器に通達する。そうなれば、睡眠が邪魔されかねないのではないか。

コーネル大学の研究チームがそれを試す実験を行った。被験者の膝の後ろに光ファイバー・ケーブルをつけ、皮膚の一部に光をあてた。一部といっても、その範囲は25セント硬貨ほどの大きさだ。被験者は真っ暗ななかで眠っていたが、そのごくわずかな光があたっただけで、体温とメラトニンの分泌に変化が生じた。やはり、目を覆うだけでは十分ではないのだ。ぐっすり眠るためには、眠るときの環境をきちんと整える必要がある。

遮光カーテンで
最良の睡眠環境をつくる

まずは、近年人気が高まりつつある「遮光カーテン」に替えよう。いまではたいていのカーテン売り場で扱われている。それから、光を発し続けるものを寝室から取り除こう。この二つを今夜のうちに行えば、明日起きたらきっと私に感謝したくなる。睡眠の専門家は、顔の前に手をもってきても見えないくらいの暗闇で寝ることを推奨している。私自身、豆電球をつけたまま寝る習慣で育ったせいで、部屋を真っ暗にして寝るのは本当に勇気がいった。

豆電球と言えば、フィラデルフィアにあるペンシルベニア大学シェイエ眼科研究所の研究チームが、小さな豆電球一つでも子どもの近視が進む一因となり、大人になってから深刻な視覚障害を招く恐れがあると発表した。彼らは2歳未満の子ども479人を三つのグループに分けた。真っ暗のなかで寝る子ども、豆電球が一つついた状態で寝る子ども、電気をつけた状態で寝る子どもだ。その結果は恐ろしいものだった。

真っ暗のなかで寝た場合、将来的に近視になった子どもは10パーセントだったが、豆電
球の部屋で寝た子どもは34パーセント、電気をつけた部屋で寝た子どもに至っては55パーセントが近視になったのだ。あらゆる条件を同じにして行われた実験ではなかったとはいえ、この結果は絶対に無視できない。なにしろ、大人だけの問題ではなく、自分の子や孫にもかかわる問題だ。

私たちの遺伝子は、暗闇で眠ることを当たり前だと思っている。いまは、部屋のなかで何かしらの光が一晩中ついていることも珍しくない。外の世界で起きることはどうにもならないのだから、せめて自分の家のなかのことは自分の手で何とかするしかない。最近の車のヘッドライトや街灯には、LEDが使用されるようになった。LEDは、光のなかでもとくに睡眠の妨げとなる。だからこそ、遮光カーテンは絶対に必要だ。

寝室を居心地のいい暗闇に変えるべく、行動を起こそう。私の睡眠は暗闇に変えた瞬間からよくなった。寝室を真っ暗にするようになってからというもの、最高の睡眠がずっと続いている。

間接照明がよくない、もう一つの理由

色には変化に応じた温度があり、それが人体に影響を及ぼす。絶対温度の単位ケルビンを用いた色温度表を見ると、ブルーはいちばん右端になる。この表は、右に行くほど温度が高く、左端のレッドに行くほど温度が低い。私たちが「熱い」でレッドを、「冷たい」でブルーをイメージするのとは反対だ。このことから、ハーバードの調査チームは、夜になったら薄暗い赤い照明を使うことを推奨している。彼らのデータによると、「赤い光は、体内時計とメラトニンの抑圧にもっとも影響力が小さい」という。

間接照明や天井の照明に使われる標準的な電球は、高い熱をもつ光だ。そういう電球の代わりに、暗くなったらキャンドルの優しい光をともして睡眠の質を高めよう。私たち人間は太古の昔からずっと、調理のときも、身体を温めるときも、暗い夜道を照らすときも、熱い炎を大事に使ってきた。自宅でともすキャンドルだって、小さいとはいえ立派な炎に変わりはないので、取り扱いには十分注意してもらいたい。

また、自宅の照明を赤い電球に替えることだってできる。そうすれば、パートナーとのあいだにいい雰囲気が生まれる効果も期待できる。音楽でも、ロック、R&B、カントリー、Kポップなどのジャンルを問わず、赤い光が出てくる曲はかなり多い。光は色も大事だが、明るさを表す照度についても知っておくと役に立つ。

照度を表す単位が「ルクス」だ。
太陽光が直接照らすと最低でも3.2万ルクスになる。私たちの先祖にとって、夜の光と言えば月明かりだ。1ルクスがせいぜいのその光と比べると、現代の私たちがどれほど異常な量の光を浴びているかよくわかるだろう。