確かに、音楽ビジネスは配信でダメージを受けた部分があると思います。特にデータ化や違法サイトで、ソフト販売が打撃を受けた。それは、音楽は携帯だろうがiPodだろうが、基本的には一人で楽しむものだからじゃないでしょうか。
でも、映像と音とセリフの入った映画を、携帯で一人で観て充足感があるのか。休日に、友達や恋人と何するか考えた場合に、日本なら食事に行くか、カラオケやボーリングに行くか、買い物に行くか、あとは映画を観るか、ぐらいしか選択肢はない。映画がなくなると、かなりピンチじゃないですか。
だから、なくならないと思う。コンテンツというだけでなく「体験を共有する」という点が、映画にとって最大の強みだと思います。
震災後に痛感したのですが、映画って無力ですよ。お腹も一杯にならないし、被災者の方々に対して直接的にできることがあるわけじゃない。
ただ半年後、1年後に、日本国民がもう一回立ち上がろうとなったときに、その気持ちを前に向かせることはできるんじゃないか。映画は必需品ではないけれど、誰かの人生を変えることができるかもしれない――そんな映画の力を信じて、これからも映画を作っていきたいと思います。