どの作品でも、シチュエーションやキャラクター、ストーリーといった映画の表面的な面白さと、もう一つなぜその物語が面白いのか、裏に隠れたテーマや普遍性を、二重に脚本に詰めこむことが大事だと思っています。

【法則3】物語に通底する普遍性を探す

――普遍性というと?

 たとえば、『DMC』は馬鹿馬鹿しいギャグ漫画ですけど、ある普遍性が織り込まれている。

 主人公の平凡で弱気な青年は、おしゃれなミュージシャンになりたいけれども、才能があるのはデスメタルのほうで、図らずもそちらで成功する。それはすなわち、「自分のやりたいことと求められてることは一致しない」ということや、「案外自分の求めていないところに才能があって、そこに向き合うことこそが生きてくということだ」という、誰もが共感できる普遍的なテーマです。

 映画を観ただけで、そこまで深刻に捉える人はほとんどいないと思いますが(笑)。脚本を作っていく上で、通底するテーマがあるかどうかで、物語の深度が全然違うと思うんです。そのテーマが支柱になって、枝葉であるギャグが活きてくる。

 ほかに『宇宙兄弟』の場合は、映画に通底するテーマとして「日本人としての矜持」を据えて、1年かけて脚本を作っていきました。それは奇しくも3.11後、私たちに突きつけられているテーマと重なります。

 宇宙開発史は、冷戦構造に始まり、米ソのどちらが先に月に人を送れるかと国威発揚で取り組まれてきたナショナリズムの歴史そのものなので、“宇宙”を描く以上、日本人としての矜持は切り離せないと考えていました。それらを考え併せると、日本人の兄弟が人類史上初めて月に降り立つ約束を果たそうとする姿は、そのストーリーの爽快さに加えて、日本人を高揚し、前を向いて生きる気力を生む何かがあると感じています。

【法則4】日常のなかの違和感に敏感になる

――異業種の人との会話が、映画作りに活きていると仰ってますが。

 学生時代からバックパッカーをやっていて、出逢った友人が多いんですけど。辺境の地で一泊1000円しない相部屋のドミトリーなんかに泊まるので、絵描きや建築家、教師や製薬会社勤め、或いは後々そうなる人たちと会うんです。