ところで、日本の原発の老朽化の問題は、震災前から指摘されていた。もともと30年の運転期間を認可され、その後は10年ごとに延期を判定することになっている。ところが、原子力ムラの人たちは、大した根拠もなく、まともな検査もないままに、60年、100年使えるなどといって通用してきた。福島第一の1号機が、ちょうど40年前に運転が開始された古い炉だ。
もちろん、今回の事故の原因は老朽化だけに求められない。しかし、過去に世界で閉鎖してきた130基の平均寿命がわずか22年と短いことや、経年に比例して事故トラブルが増えることを鑑みれば、今後は古くなる前に余裕をもって最長でも40年程度、できれば30年目には厳しい検査の上で閉鎖を判定すべきだろう。
仮に40年寿命とすると、日本原電・敦賀1号機(福井県敦賀市)、関西電力・美浜1、2号機(福井県三方郡)は閉鎖されることになる。加えて、震災で相当なダメージがあると想像しなければならない東電・福島第二1~4号機、東北電力・女川原発1~3号機(宮城県牡鹿郡)、同・東通1号機(青森県下北郡)、日本原電・東海2号機(茨城県那珂郡)は、上記で述べた「新しい安全審査体制」、「安全基準の抜本的な見直し」、「国民に負担を押し付けない新しい損害賠償の枠組み」が整った上で、きちんとした点検調査を行い、再起動するかどうかの判定が必要だろう。
これまで漠然とイメージされてきた「日本の基幹電源は原発だ」というのは、もはや過去の幻影に過ぎない。すでに震災直後で、日本の原発による発電量は、全体の10%台に落ちている。そして、前述の基準を当てはめると、今後10年で全体の発電量に対し10~0%の水準まで低下するだろう。
10%程度の供給量なら、他の電源などで補完できる。最終的に、原発を完全に止めるのか維持するのか、その選択は国民の意思に委ねられる。
原発と化石燃料から脱却し
自然エネルギーと省エネを拡大
一方で私たちは、残りの90~100%の発電量をいかに賄うか、真剣に考えなければならない。
短期的(10年程度)な電力需給をまかなうには、火力発電に依存せざるを得ないだろう。ただし天然ガスは別として、特に石油や石炭などの化石燃料に依存すると、2つの問題にぶち当たる。