多様性に対する企業の
メッセージが必要な時代

――これからの日本の企業における人材マネジメントはどう変遷していくと思われますか?

 いまはまだ、ビジネスは会社単位で動いているのですが、いずれ、そこで働いている個人のタレント性が顧客から評価され、そこにフォーカスが当たるようになるのではないかと考えます。

 例えば、X社で働いているAさんのスキルや能力が一種のブランドになると、他社からもAさんに仕事をしてほしい、サービスを受けたいといったオファーが来るような世界です。実際、海外ではリンクトインが普及していて、個人のビジネススキルや経歴が簡単に分かるようになっています。プロジェクト単位であれば、いろいろなメンバーがその都度集まるわけで、外国人か障がい者かLGBTかといったことより、必要なスキルと経験や仕事に対するモチベーションのほうがずっと重要です。

 もうひとつ、これからの時代に大事なのは、多様性に対する企業としてのメッセージです。「うちはこういう会社だ」ということを、トップの言葉できちんと伝える。欧米の多様性は、民族や宗教間の殺し合いにまで発展しかねない奥深さがありますが、日本の多様性はそこまで重くない分、ハードルは高くありません。トイレとか更衣室の問題ぐらいは何とでもなるレベルです。トップの考え方ひとつでどんどん変わっていくはずですし、また、変わっていくべきだと思います。

※本稿は、インクルージョン&ダイバーシティマガジン「オリイジン(Oriijin)」の掲載記事を転載したものです。