帰任者は「自分が小さくなった感じ」になる?
実際、ダイヤモンド社と中原研究室との共同調査によると、帰任者の60%は裁量の低下を感じ、53%は役職が低下したように感じるという調査結果が出ています。多くの方から出る言葉は「自分が小さくなったような感じ」というもの。
「結果的に離職はしなかったものの、帰任後に『このままでいいのか』という思いが沸き上がった人も入れると、相当数が離職を考えたと思います」と言う方や、「本社に戻ったらいきなり一マネジャーに戻ってしまって、何かガクッていう感じなんだよね」と話す方もいました。
海外赴任者は、海外でのタフな仕事経験を通して、知識やスキルだけではなく、「新しい視点」を持つようになります。そこで獲得した「新しい視点」は、これまでの慣れ親しんだ「元の職場の風景」を、まったく別の「色あせた風景」に変えてしまう可能性をはらんでいます。
海外赴任によって、「新しい視点」を身につけることは、有意義なことではありますが、それが帰任後の違和感、失望感につながってしまうこともあるのです。
また、当然のことながら、「損得勘定してみると、海外赴任をせず、国内で仕事をしていた方が早くいいポジションへ昇進ができてお得だった」という人事システムが出来上がってしまっていたとしたら、人は「合理的選択」の結果として、わざわざグローバルな舞台で活躍しようとはしません。
人事の仕事として「グローバル人材育成」を行う場合は、帰任後にどれだけ魅力的なキャリアを積めるのか、といったところまできちんと整備しておく必要があります。
そして、実際に帰任した後には、個別のキャリア面談を施すなど、丁寧なコミュニケーションを図ることが重要です。
海外赴任は、リーダーシップ開発においても、重要な職務経験の一つとなります。海外帰任者を、将来のグローバルリーダー候補として大切にするという視点も、大事なところではないかと思います。