株価の高低を判断する尺度は、これまでいろいろなものが考えられてきたが、主なものは、配当利回り、PER、PBRの三つだ。
厳密な歴史考証をしたわけではないが、最も早い時期から存在した尺度は「配当利回り」だった。投資家が株式投資から受け取る最もわかりやすい果実は配当だからだ。かつて、安全な債券の利回りを株式の配当利回りが上回る状況が当たり前だったが、利益の成長性を株価評価に織り込む「利回り革命」を経て、配当利回りのほうが低い状態が長く続いた。
しかしバブル崩壊に金融危機、さらにデフレに伴う低金利の定着などで、再び株式の配当利回りが金利を上回る「夢のない」しかし「現実的な」時代になった。本稿執筆時点で、長期金利(10年国債の流通利回り)が1.1%台なのに対して、東証1部上場銘柄の平均的な配当利回りは2%強ある。
「配当性向」すなわち、利益の中から配当を出す割合は、企業の(最終的には株主の)方針で決まり、企業によってかなり差がある。配当よりも、その源泉である利益を見たほうがいいと考えても不思議ではない。そこで株価を一株利益で割った「PER」(株価収益率)が登場した。
PERは株価の評価尺度の中で最も普及している。株式投資の初心者は、「予想される利益成長率が高い場合は、PERが高くてもいい」という大原則を頭に入れて、個々の銘柄のPERがなぜ違うのかを徹底的に比較すると、銘柄が覚えられるし、株価評価のおおよその感じがつかめるようになる。
しかし、利益は期ごとに大きく変動する。たとえば、一時的な不況や災害などで利益水準が大きく変わったときに「環境が平時に回復した想定下の利益」に基づくPERを計算してみるようなアレンジが必要になる場合もあり、こうして計算される修正PERは、かなり主観的な分析の産物になる。