まわりの人を巻き込んでいくタイプのリーダーが求められる時代

女性リーダのマインドセット、働き方が変わる<br />たった1つの質問堀江信宏(ほりえ・のぶひろ) 一般社団法人コーチングカレッジ 代表理事1971年生まれ。立教大学卒業後、伊藤忠商事に入社。10年間、不動産事業、貿易事業、海外植林事業、コンビニエンスストア事業に関わる。2004年、伊藤忠商事を退職しイベント企画運営会社を設立。一般社団法人コーチングカレッジにて600人の卒業生を育成。分かりやすいセミナーと親しみやすい人柄で、経営者から会社員、主婦、学生まで幅広く人気がある。2015年9月に悪性リンパ腫を宣告されたが、約半年間抗ガン剤治療に専念し、2016年春に寛解。ガンを「ギフトだった」と言い、さらなる幸せと発展に生かしたコーチング技術は、逆境にある人たちを励ましている。訳書に『目標達成する技術』『人を動かす技術』等(累計30万部)がある。

坂東 「これからは、『俺について来い』的な自分の価値観を人に押しつける、いわゆる引っ張っていくタイプのリーダーはあまり必要とされないと思います。そうではなくて、みんなで一緒にやっていこうようというように人を巻き込んでいくタイプのリーダー、インクルーシブ・リーダーシップといいますが、そういうチームメンバー一人ひとりの力を引き出すタイプのリーダーが求められると思います。成熟した社会では、男女ともに、そういう新しいタイプのリーダーがもっと必要なんじゃないでしょうか」

堀江 「私もそれは強く思います。成長期で何をすればいいかわかっている時代には強いリーダーがいて、俺について来いでもよかった。でも、今みたいに先が見えないと、みんなの知恵を集めないとだめですよね。目標に向かって他のものを無視して、そこに集中するだけの、ある意味、男性的な感覚だと、いろんなチャンスとか変化とかを見落としてしまいます」

坂東 「おっしゃるとおりです。日本の20世紀の時代は、豊かになろう成長しようと、目標を共有しているのが当たり前だったんですけど、今はどういう目標をこのチームのみんなが共有すればいいのかと迷っている。そこが一番のポイントになってきています。だから、みんなの意見をちゃんと聞いて引き出していく、みんなの能力はどこにあるんだろうと一緒に考えて相手に働きかけるとか、そういう女性的なリーダー、母親的なリーダーというのが大事になってきてるんじゃないでしょうか」

堀江 「気配りとか、女性的なリーダーの良さという点では、私は、それを妻から学びました。私は商社に十年勤めて、そのあと起業したんですけど、はじめはなかなかうまくいかなくて、いろんな人と協力してやっていかなきゃいけない時に、なかなか、その協力関係がうまく築けなかったりとか…」

坂東 「そうでしたか」

堀江 「たとえば、家族でディズニーランドに遊びに行った時に、私なんか、どうしても仕事の癖というか、家族と一緒にいる時も合理的にものを考えてしまうところがあります。自分達が園内でマップを広げて見ている時に、人が流れてきて自分達のグループが邪魔になっている、家族が流れをせき止めているなと思ったら、すぐパッと脇に動いてというように、合理的に行動しようとします。でも、妻は、まず家族みんながどうしたら幸せなのかって、いちばん根本のところを常に考えるのです。根本的に大切なものを、まずは大切にするというか。あとは、ふだん見落としがちなものにいろいろ目配りしてチェックして、それらをプラスに生かしていくという、この感覚は自分にはなかったものですね」

坂東 「それはまさに堀江さんが『自問力』で書いていらした、自分が得たい結果は何だろう? 本当の目的は何だろう? という質問と同じことですね」

堀江 「そうなんです。それを妻から学びました。坂東先生が書かれていた、『女性なりの気づかいみたいなところが発揮されるとすばらしいリーダーになる』というのが、僕はまわりにそういう人がいっぱいいるんでわかっているんですけど、それを改めて理論的に考えさせられました」

坂東 「ありがとうございます。でも、女性達も、まだ職場に進出して日が浅いからだと思うんですけれど、認めてもらうにはどうすればいいかとか、自分の能力でこの任務をこなすにはどうすればいいだろうとか、効率的にこなすにはどうすればいいかとかっていう短期的な目標ばかりを考えがちなんです。でも、少し視点を変えて、『自分はそもそも何のためにこの仕事をしているんだろう』とか、『女性が社会で責任のある仕事をする意味って何なんだろう』というように、本当の目的を考えると、ちょっと動き方や働き方が変わってくるのかなと思います。男の人と同じような価値観で、同じような働き方をして、同じ目的を追求するんだったら、別に女性がリーダーにならなくてもいいと思うんです」

堀江 「たしかに、そうかもしれませんね。それぞれ得意・不得意があるということでしょうか」

後半につづく