ヒトの移動の拡大は、政治事件や内戦に伴う一時的な人口移動が収まった後も世界的に高いレベルの状態が続いた。欧州への大きな流入増は、1990年代後半以降にややレベルダウンしたが、欧州に代わって北米などの流入増が拡大し、先進国全体の純流入のレベルはそのまま維持されたのである。また、欧州においても東欧からの流入はピークを過ぎたが、これに代わって中東や北アフリカからの流入が増えたため、流入レベルは再度拡大基調にある。

 このように高い流入者レベルが継続したため、欧米先進国では移民人口比率(外国生まれの人口の割合)は上昇を続け、今では軒並み10%を大きく上回るに至っている。日本の純流入数は、外国人の流入が増加した1990年代以降でも、5年ごとの年平均でせいぜい10万人と人口規模に比べて少なく、移民人口比率は1%台に過ぎない。反移民感情の高まりは、外国人流入の少ない日本では想像できないような政治環境を生み出していると考えられる。

拡大したモノのグローバル化は
2000年代後半に横ばいへ

 モノの移動は、やはり貿易に伴う物資の移動量を取り上げるのが順当だろう。しかし、国際的な貨物移動量を手軽に得られるデータはないので、代理指標として貿易額を見ることになる。下図は、世界全体の貿易額(ここでは輸出額)の対GDP比の推移を追ったものだ。

◆図2 世界の貿易と直接投資の拡大推移


©本川裕 ダイヤモンド社 禁無断転載 拡大画像表示

 世界全体の貿易規模は、1960年代以降、ほぼ一貫して拡大してきている。1960年前後にはGDPの10%台前半だった貿易額は、リーマンショックが勃発した2008年には30.8%とピークを迎えている。拡大のテンポに着目すると1980年代は一時期勢いが衰えたが、1990年代後半から急拡大がはじまっている。

 もう1つ顕著であるのは、リーマンショック後の世界不況による落ち込み幅が、これまでにない大きな減少幅となった点である。モノの移動において、グローバル化は、「レベルの上昇」と「変動の激しさ」という2つの側面で大きなインパクトを世界経済に与えているといえる。