福島に「冷たい」のは、辞任した今村復興相だけではない。福島軽視の風潮は日本に広がりつつある

今村復興相は福島に対して
いかに「冷たい」発言をしたか

 今村雅弘復興大臣が辞任しました。福島の人たちの気持ちを無視した非常識な発言を繰り返した以上、辞任は当然ですが、もしかしたら実際に福島に関わっていない人には、今村氏の発言がどれだけ非常識であったかが実感としてわからないのではないでしょうか。

 そこで最初に一例だけ紹介しておきますと、今村氏は今年1月に「福島の復興も3月で7年目に入り、マラソンでいうと30キロ地点くらいに来ている」と発言しました。
 
 しかし、たとえば私が顧問として関わる福島県楢葉町では、震災以降、小中学生はいわき市の仮設校舎で授業を行ない、今月からようやく地元の校舎で授業が再開されたのですが、震災前は小学生が432人、中学生が254人いたのに、今月から地元の校舎に通学している小学生は約50人、中学生は約40人に過ぎません。

 つまり、楢葉町の現実は“マラソンの30キロ地点”どころか、ようやくスタート地点に立てたに過ぎません。この一例からも、いかに今村氏の発言がアホの極みであり、福島に対して冷たいものであったかがわかっていただけるのではないでしょうか。

 ただ、冷静に考えると、福島に対して冷たいのは今村氏のような政治家だけではありません。目立ちませんが、官僚の側もだんだん福島に冷たくなっているのではないでしょうか。先日公表された東京電力の幹部人事から、それがうかがわれるように感じます。

 東電の最大株主は国ですので、当然ながら東電の幹部人事には所轄官庁である経産省の意向が大きく影響します。その幹部人事ですが、すでに報道されているように、6月の株主総会をもって、次期会長に日立製作所の川村隆名誉会長を招き、社長にはグループの小売り会社社長の小早川智明氏を昇格させ、現社長の廣瀬直己氏は副会長となります。