遊びから色への思い入れへ
——面白いですね。色を選ぶときに参考になさるんですか?
松 はい。ある編集者さんとはカバーだったり本文だったりで特色を使うときには、ほぼ必ず「フランスの伝統色」を使います。「今回は黄色系で何か合いそうなものはありますか?」という話をいただいて、いくつか「フランスの伝統色」の中からピックアップして、ナンバーと色の名前、そして由来を話すんです。で、二人で相談しあって「色的にも由来的にもぴったりですね」とか、「この意味よくわかんないんですけど(笑)」とか、そんな話をしながら最終的に色を決めていきます。
——その色の由来も含めて決めるということですか?
松 まあ半分は遊びと言ってもいいんですが、そうやって決めていくと後々も使った色のことを忘れなくなります。「そういえばあのとき使ったのは、マカダムっていう舗装の色だったと思いますが、今回はそれに近いイメージですか?」とか。こだわりというよりも色への思い入れが強まりますよね。そのやりとりを楽しんでいます。ここに僕が持っている「フランスの伝統色」のカラーガイドがありますが、多分ほかのデザイナーの方より使い込んでいると思います(笑)。入稿するときにカラーガイドからチップをちぎって添付するのですが、かなり少なくなってますね。
——F241あたりは多用されていますね。
松 ここに並んでいる本の中にもオレンジ系の色を使ったものがいくつかありますが、この「ルージュ・オランジュ」は黒系と合わせるととても映えます。他社さん含め、このオレンジと黒の組み合わせの依頼が多い時期があって、活躍してもらいました。
——オレンジと言えば、お名刺やホームページに描かれたシカのアイコンもオレンジ色ですね。そして、かわいらしいフィギュアも。
松 これも基本色は「ルージュ・オランジュ」だったかと思います。そう言われると、この色ってもう僕と切り離せないトレードカラーかもしれません。