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Beoplay H4が発売された

いまさらワイヤレス化計画

 ヘッドフォンでも買うか〜と思い立った私が目をつけたのはワイヤレスヘッドフォンである。

 いまさらな気もするが、世の中ワイヤレス化が進んでいるのに、いまに至るまで興味を持たなかったのには理由がある。数年前、まだワイヤレスヘッドフォンがで始めたばかりの頃、某欧州メーカーのワイヤレスヘッドフォンを購入し、あまりの使い勝手の悪さに、すぐに手放したことがあったのだ。

 そもそも音が悪い、Bluetooth接続が安定しない、充電が持たない……ワイヤレスヘッドフォンに対するイメージは最悪だった。しかし周りの話をきけば、ここのところのワイヤレスヘッドフォンはバカにしたもんじゃない。むしろポータブルなら、ワイヤレスを使わないメリットはあまりない。そんな意見がきこえる。

 それで、次にヘッドフォンを買うならワイヤレスにしてみるかー、と密かに企んでいたのである。これまでどんなに良さそうなものがリリースされてもスルーし続けているあいだに、ワイヤレスヘッドフォン業界は充実していった。日本でワイヤレスヘッドフォンが普及したのは、昨今のヘッドフォンブームの一端を担ったビーツ・エレクトロニクスの功績も大きいかなと思うが、とにかくより取り見取りの状態だった。

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ハウジングをたためる

 選択肢が数え切れないほどある中、興味を持ったのは、ここ数年国内でも急速に勢力を伸ばしつつあるバング&オルフセンの新作「Beoplay H4」だ。

バング&オルフセンとは?

 バング&オルフセンは1925年にデンマークで創業した歴史のあるオーディオメーカー。このヘッドフォンのリリースされている「B&O PLAY」というカジュアルラインを2012年に立ち上げてからは、家電量販店や、アップルストアなどでも積極的に取り扱いをはじめたため、国内で目にする機会も多くなった。

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同社のリリースするスピーカー

 このB&O PLAYラインからは何種類かのヘッドフォンのほか、「Beoplay A2」というBluetoothスピーカーなどもリリースされており、いずれもに共通するのは、素材や製造工程に対するこだわりである。デザイナーにセシリエ・マンツやヤコブ・イェンセンといった社外のデザイナーを起用し、素材の選定や構造の部分からデザインに関わってもらうことにより、「おや、なんかちょっといいぞ?」と思わせる仕上がりを実現している。

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これがBeoplay A2
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同社のリリースするスピーカーその2。このモデルの価格は1000万ほど

 Beoplay H4はB&O PLAYラインのBluetoothヘッドフォンの中では最廉価にあたるモデルで(直販価格3万2900円)、既発の「Beoplay H6」や「Beoplay H9」と比べると、重厚感はあまりなく、オーディオ的な高級感というよりも、カジュアルに振った軽やかさのあるデザインが特徴である。

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こういう細かいところのこだわりが目につく

 4月の頭に1色展開で発売されたばかりだが、ちょうど月末から新色の「タンジェリングレイ」と「サンドグレイ」の販売が開始されていたので、タンジェリングレイを購入してみた。名前の通りオレンジ色のシープスキンと灰色の樹脂を組み合わせたポップな色味である。

 だいぶポップなデザインなので、一見するとその辺で適当なものを買ってきたのか? という感じになり兼ねないのだが、マットなシープスキンとヘアライン加工されたアルミの質感にさりげなく高級感があり、よく見ると、凝ったやつだとわかる、という見た目だ。

 接続の安定性はかなりのもので、iPhoneとBluetooth接続したままiPhoneを持って室外に出て、10mほど歩いたところで引き返して、再度近づくまで、一度も接続が途切れなかった。ペアリングもかなりスムースで、Bluetoothのメニューから選択して数秒で接続できる。有線接続用のケーブルも付属するが、使用する機会はあまりなさそうだ。

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付属品はこれだけ。ケースがついているともっとよかった

 バッテリー性能も優秀で、2.5時間の充電で公称19時間連続使用できる。1日に1〜2時間使用するとして、1日1時間分程度の自然放電を計算に入れても、1週間程度は充電なしで使用できることになる。スルーしているあいだにワイヤレスヘッドフォンはここまで進歩していたらしい。

 コントローラー部分の操作はiPhone付属のEarPodsのリモコンと基本的には同じで、1度押しで再生/停止、2度押しで先送り、3度押しで頭出し。それと、ボリュームの大小用のボタンが各ひとつ。iPhoneをポケットに入れていても基本的な操作ができるのはありがたい。

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アップル製品にも似た感じの化粧箱

 そのほか、専用のiOS/Android用無料アプリ「B&O PLAY」をインストールすれば、スマートフォン側からイコライジングできる機能をそなえている。イコライジングと言っても、「Warm」や「Bright」といったアバウトな指標に対して、タッチで調整する程度のものなのだが、大きく音質が変わるので試してみても面白い。

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アプリからイコライジングができる

 実用的な使い方としては、「Warm」に大きく振ると、電車の中などで音漏れの原因になりやすい広域のカチャカチャとした部分がカットされるので、電車の中では「Warm」寄りに設定しておくといったこともできる。

デンマークのヘッドフォンは楽しい

 色々と書いてみたものの、やはりこの製品で一番のキーとなるのはデザインだろう。音質的には、他の同価格帯の製品と比べて際立っていいということはなく、3万円前後のヘッドフォンとしては平均的なレベルだ。具体的には、クッション性の強いシープスキンのイヤーパッドの効果が大きく、ある程度音場的な広がりが再現できる音作りになっているため、ダイレクトな音質の方が相性のいいロックよりも、ポップスやクラブ系の音楽の方が相性がいいように思える。帯域の観点から見ると、モニターに近い素直な出力で、際立ってどこの帯域がはっきり出ることはないオールマイティーな作りだ。一言で言えば、派手でなく、分解性能もある程度高く、センスよく小綺麗にまとめてある音である。

 しかしながら、いわば、大きな個性がないとも形容できる音の部分を補ってあまりあるデザイン的な魅力と、快適な装着感はこの製品特有のものであり、つけたときの心地よさや視覚的な満足感は、いかにも北欧の老舗オーディオメーカーらしい。

 デンマークといえば、オーディオだけでなく家具や雑貨などもデザイン性や使い勝手の優れた製品を多く生産していることで知られるが、やはりヘッドフォンにもどこかそのような部分があり、アメリカやドイツのオーディオ製品とは一味違う感触がある。

 少々自分の話になると、ポータブルオーディオといえばシュアかゼンハイザーと決めていた自分は、最近あまりこだわらなくなってきて、ビーツ・エレクトロニクスの安めのヘッドフォンを買ってみたり、今回のようにバング&オルフセンに手を出してみたりしているのだが、このメーカー特有の持ち味は新鮮に感じられたし、ワイヤレスヘッドフォンという部分も相まって、新しいものを購入した喜びはかなり大きかった。

 ワイヤレスヘッドフォンを買ってみようと考えているユーザーだけでなく、現在のポータブルオーディオ環境に満足しているユーザーのサブ的な製品としてもお勧めできるヘッドフォンである。使ってみると、ファンが急激に増えているのも納得できるはず。さり気なく品のいい音とデザイン、生活に取り入れるとなんとなく日常までセンスのよくなったような気分になれる、そんなこのメーカーの魅力に取り込まれている人が多いのだと思う。