2年半ほど前に「JAPANESE DANDY」という、現代日本の男の肖像を集めた写真集が発行されたのをご存じだろうか。TV、新聞、雑誌等のメディアでかなりの注目を浴びていたので、少しでもファッションにご興味がある方ならば、どこかで目にしているかもしれない。

 それはある種、昨今の過度なカジュアル化、本来の伝統的なスーツ・スタイルの基本なども欠落したまま、ただ着崩したファッションが時代のスタイルになろうとしていることに対するアンチ・テーゼだったともいえる。もちろん、それも時代の要請であったに違いない。

 しかし、テーラードというクラシカルなスタイルは長い年月をかけて育まれてきたものであり、その伝統を無視した着こなしがすべてになってしまうようなことがあれば、それはとても悲しいと思う人が実に沢山いるということも、この本によって解ったことだった。

 だがこんな時代にあっても、自身の生き方を投影するように、そのスタイルを貫いて時代を超える“男たち”がいたのである。そんな“男たち”がいたことの記録として、この写真集は企画された。被写体となったのは、各界で活躍する“男たち”。

 この写真集は「ポートレート」というジャンルの「アート」であり、そこに登場する“男たち”は、あくまで“素人(写真を撮られ慣れていないという意味で)”であり、時代を創っている、あるいは創ってきた、年齢に関わらず素敵な大人たちの肖像である。