尖閣問題などを巡り、冷え切っていた日中の国民感情だが、東日本大震災を機に日本への同情が中国で高まり、対日感情に改善の兆しが見え始めたと言われている。被災地の経営者が、大津波から身を挺して中国人研修生を守った「美談」が、対日感情の改善に大きく貢献しているようだ。しかし一方で、原発事故などの影響で負の印象を強め、日本への旅行や日本製品の購入を控える中国人も少なくない。こうした中国人の「心の動き」を、日本人がどう評価しているかも気になるところである。日中両国の国民感情は、本当に改善しているのか。世間の声を基に分析してみよう。(取材・文/プレスラボ・宮崎智之)

各国で盛り上がる日本のポジティブ評価
冷え込んだ日中関係にも雪解けの兆し?

 東日本大震災が発生して以降、様々な国から被災地へ救援隊が派遣され、義援金や支援物資も届けられている。日本国内では、こうした諸外国の人道的支援に感謝の意を示す声が広まっている。

 手厚い人道的支援が行なわれる背景には、震災後の日本のイメージが、外国からポジティブに評価されている影響もある。博報堂 震災復興プロジェクト室とエー・アイ・ピーが中国、韓国、英国、米国など9ヵ国・2700人に震災後の日本のイメージについて聞いた調査では、「日本には早く復興してほしいと思った」(62.8%)、「暴動などが起こらず規律正しいと思った」(45.1%)などのポジティブ評価が、ネガティブ評価を大幅に上回った。

 とりわけ興味深いのが、中国人の日本に対するイメージが、目に見えて改善していることだ。日本と中国は、昨年発生した「尖閣問題」により、関係が大きく悪化した。

 中国では連日大規模な反日デモが繰り広げられ、レアメタルの輸出禁止や日系ゼネコン社員の拘束など、日本に対する露骨な「報復」が行なわれた。こうした事態を受け、日系企業のなかには「脱中国」を真剣に検討する関係者も続出したほどだ。

 その後両国の関係は、東日本大震災に至るまで、大きく悪化することも改善することもなく、「心理的な冷戦状態」を続けてきたと言える。