三越伊勢丹HD「1億かけて1銭の利益も出ない催事」が象徴する苦境決算発表記者会見の後、群がる記者の前で語る杉江俊彦社長 Photo by Kosuke Oneda

「お話しするのも恥ずかしいが、1億円のコストをかけて、1銭の利益も出ない催事を一生懸命やっていた」――。

 大西洋前社長が3月に突如辞任し、混乱が続く百貨店業界の雄・三越伊勢丹ホールディングス(HD)。後任の杉江俊彦社長は5月10日、2017年3月期決算の発表記者会見で、基幹店である伊勢丹新宿本店、三越日本橋本店と銀座店の3店について「コストコントロールが全くできていなかった」と指摘。冒頭の発言は、その一例をあけすけに説明したものだ。

 自嘲的な発言が口をついて出てしまうのも無理はない。中国人観光客の“爆買い”需要が去り、同社の17年3月期の連結売上高は2.6%減の1兆2534億円、純利益は43.5%減の149億円となったからだ。

 一方で、大丸・松坂屋を擁するJ・フロントリテイリングは、17年2月期決算で減収となったものの純利益は増益に、高島屋も減益ながら純損益のマイナス幅は12.4%減にとどまるなど、三越伊勢丹HDの不振ぶりが際立つ。

 こうした決算を受けて杉江社長は、14~16年度の中期経営計画の目標値がほとんど全て未達に終わった「大西路線」を全否定し、大きな転換を図ると明言した。

 在庫リスクを自ら抱えて独自商品を開発したり、メーカーと共同開発して販売し利益率を高める「仕入れ構造改革」。顧客との接点を増やすとして進めた中小型店「エムアイプラザ」「イセタンサローネ」の展開…。大西前社長が華々しく打ち出した新機軸は、たびたびメディアを賑わせてきた。