来年2月に閉店する西武筑波店 Photo by Hiroyuki Oya

百貨店の大量閉鎖時代の到来で、有名ブランドの淘汰は始まるのか――。化粧品や服飾雑貨、衣料品の有力ブランドといわれるブランドの多くは、流通のヒエラルキーの頂点に君臨した百貨店でコーポレートブランドの価値を高め、ショッピングセンター(SC)や商業ビルなどマス市場で「果実」をとるという戦略を展開してきた。しかし、郊外型の百貨店の相次ぐ閉鎖計画や都市型百貨店自体のブランド力低下、ネット通販の台頭で、そうした従来の販売戦略が機能しなくなる可能性が浮上している。(流通ジャーナリスト 森山真二)

百貨店の大量閉鎖に頭を痛める
大手のアパレルや化粧品メーカー

「百貨店業界ではそごう・西武は池袋店のみ、三越伊勢丹は伊勢丹の新宿本店、日本橋三越、銀座三越があればいいといわれてきましたが、それが現実になるのではないかと危惧しています」。こう冗談めかして話すのはある百貨店に出入りする業者だ。

 三越伊勢丹は三越千葉店、多摩センター三越の閉鎖を発表、そごう・西武はそごう柏店や西武筑波店(茨城県つくば市)や西武百貨店八尾店(八尾市)の閉鎖を決定した。

 業界では「まだまだ、百貨店には閉鎖予備軍があるのではないか」と観測されており今後、東京都心からほど遠くない近郊の百貨店のさらなる閉鎖が予測されている。

 しかし、こうした百貨店の大量閉鎖時代に頭を痛めているのは、当事者の百貨店のみならず、百貨店に納入していたり、出店していたりする衣料品や化粧品ブランドだろう。というのも、アパレルメーカーや化粧品メーカーは大手ほど百貨店と「運命共同体」だからだ。

 百貨店の衣料品売り場。一見、いろんなブランドが並んでいるようにみえる。が、実は一つのアパレルメーカーのブランドが散りばめられている。しかも売り場に立っている店員もアパレルメーカーが派遣している人たちがほとんどだ。

 インバウンド(訪日外国人)の旺盛な需要の陰に隠れて目立たなかったが、百貨店のアパレル製品はあまり需要が伸びておらず、アパレルメーカーは百貨店側の部門利益確保の目的から納入価格など条件面でのプレッシャーをかけ続けられている。いわゆる納入価格の引き下げの要請だ。

 そうでなくてもアパレルメーカーは店員を派遣し、売れ残った在庫は引き取るという取引を前提にしてきたため、アパレル自身がすでに体力を消耗しており、もはや過度な納入価格の引き下げ要請や人材の派遣には応じきれなくなっているのだ。