百貨店国内最大手の三越伊勢丹HDは、4月1日付で大西洋社長が退任し、後任に杉江俊彦専務が就任する人事を発表した。大西社長退任の理由は、本業であるデパート事業の不振だ。一時は、中国人観光客の“爆買い”が同社の業績を支えた時期ももあった。しかし、中国の成長減速や人民元安による中国人訪日観光客の消費落ち込みを読み切れなかったことや、国内では消費税増税による家計の節約などが業績を圧迫し、結局、不採算店舗の閉鎖にも遅れが出た。

 同社の総売上高の90%以上は、“三越”、“伊勢丹”ブランドの百貨店事業が占めている。大黒柱の事業の不振のため、2017年3月期の純利益は16年3月期の260億円から半減と予想されている。もともと大西社長は、伊勢丹社長時代、男性に焦点を当あてた商品開発や店作り、ブランド発掘で成功し、そのノウハウを老舗百貨店の三越にも生かし、経営改善を図ってきた。だがそれも、これまでのところは期待されたほどの効果は出ていない。

 三越伊勢丹HDの株価は、アベノミクスが本格的に始動した2013年以降から足許までの上昇率が60%程度にとどまる。この間、TOPIXが95%、そして小売りセクター全体の株価が100%超上昇したことを考えると、同社に対する市場の評価が低いことが分かる。

 だが、百貨店の低迷は三越伊勢丹に限ったことではない。バブル崩壊後、デフレ経済が進行し消費が落ち込む中、百貨店業界では再編が進んだ。三越伊勢丹以外にも、大丸と松坂屋の経営統合によりJ.フロントリテイリングが誕生し、阪急、阪神の両百貨店はエイチ・ツー・オー・リティリングのもとに経営を統合した。そして、国内総合スーパーや海外の衣料量販店などとの競争は激しさを増している。

 各百貨店はリストラを進めつつ、2020年東京五輪をにらんで不動産の有効活用、大都市への集中投資や事業ポートフォリオの多様化を進めている。しかし、そうした動きが百貨店というビジネスモデルの本格的な再生につながるかはまだ見えない。今回の大西社長の退任は、百貨店業界が再生に向けて、待ったなしの状況にあることを示している。