国内製薬準大手グループの一角を占める塩野義製薬は、抗エイズウイルス(HIV)薬で稼ぎ、好調な決算が続く。稼ぎの多くはロイヤルティー収入によるもので、過度な依存には危うさも付きまとう。 (「週刊ダイヤモンド」編集部 土本匡孝)
5月10日に発表された2017年3月期決算では、経常利益で5期連続、営業利益で2期連続、純利益は4期ぶりの過去最高を更新。塩野義製薬が好調だ(図(1)、(2)参照)。5月1日の株価(終値)は5776円。約1兆9000億円という時価総額は、内資大手グループに数えられる第一三共(約1兆7500億円)、エーザイ(約1兆7300億円)をしのぐ。
近年の好調な業績に至るまでには手代木功社長以下、塩野義の苦杯をなめた年月があった。
11年11月25日という日は「痛ましい記憶」として、塩野義社員の脳裏に今でも鮮明に残る。同社の株価が手代木社長就任以来の最安値871円を記録したのだ。手代木社長もこのころを「経営者としての原点」と自戒する。
手代木氏が48歳の若さで社長に就任したのは08年4月。同年9月に米製薬会社を約1500億円で買収したが、買収先の販売力を生かして大型新薬化を見込んでいた抗肥満薬が開発中止になるなど混乱に陥った。