中国人観光客が、日本の家電量販店や百貨店などで商品を大量に購入する「爆買い」。言葉自体はメジャーとなっているものの、その実態はすでに終息を見せている。中国人観光客の興味の対象が買い物だけでなく、食や文化に移っていることなどが挙げられるが、実は、新たな爆買い傾向が顕著になっているのが、医療分野。中国人観光客がわざわざ日本にやってきてまで病院にかかりたがるその理由とは?(取材・文/フリーライター 亀田治五郎)

「金儲け狙いで患者をクスリ漬け」
恐ろしい中国の医療現場

百貨店などでの爆買いはブームを過ぎたが、医療ツアーは大人気。特に目立つのはがん検診だが、美容整形や腰痛、緑内障、花粉症など、幅広い分野で日本の病院を訪れる中国人が増えている

 都内の耳鼻咽喉科に通う中国人男性(41歳)に話を聞いた。医療ビザを使い、2~3ヵ月に1度、日本にやってくるそうだ。

「ひどい花粉症に悩まされて、日本の医療にかかることにしました。中国でも花粉症の治療を行う医院はあるのですが、よくわからない薬を処方されるだけで、一向に症状は改善しません。日本で治療を受けたことがあるという知人に話を聞いて、自分も日本に来るようになったんです」

 男性曰く、中国と日本の医療機関には根本的な違いがあるという。

「当たり前のことだけど、日本の病院はちゃんと患者を治療することを目的としていますよね。ところが中国の病院は、とにかく金儲けのことばかり考えている。『治りが悪いからこのクスリも、こっちのクスリも飲みなさい。また2日後に来てください』などと、本当に効果があるのかよく分からない薬を出されたり、通院の頻度を上げようとする。それでも湿疹ひとつ治らないことだって頻繁にあります。もちろん日本の病院だって利益を上げることを考えてはいると思いますが、何より症状が治まりますからね。安心の度合いがまったく違いますよ」

 彼の周囲では同じように、腰痛改善や打撲治療、緑内障などなど、様々な病気を治すべく日本にやってくる富裕層が多いという。特に目立つのは、がん診断を目的とした訪日だ。

 海外観光客のがん検査を受け入れる医療機関の医師は、実際に中国人観光客の検査希望が増えていると語る。

「手前味噌ですが、日本のがん診断システムは世界で一、二を争う高いレベルを有しています。がんの治療を行うためには、早期発見こそが一番重要。それを知った外国人、特に中国からの観光客からの検査予約が非常に増えています。長生きするためなら出費は厭わないといった印象ですね」

 このように、日本における“感動的な治療”に触れた彼らが自国内で口コミを拡げることで、今後もさらなる医療目的での訪日が増えると推測される。