所得税率や法人税率を特区が自由に操作できるようにすることで、復興に必要な企業や人材を広く世界から集めるということは、試みるにふさわしい重要な施策であると思われるからである。第一、具体的なインセンティブがなくては、復興を担う企業も人も集まりようがないではないか。

当初の復興財源は国が貸与するしかない

 1国2制度を試みるにしても、被災地域は今回の大震災で壊滅的な打撃を受けたわけであるから、当初の復興財源は国が貸与するしか方法がない。復興財源は、わが国の財政状況を素直に見通せば、1.に触れているように増税しかあり得ないと考える。

 私案では、当面の措置としては所得税や法人税ではなく消費税を例えば1%程度上乗せすることが望ましいと考える。そしてこの増税分をそのまま向こう5年間(あるいは10年間)特区に貸与してはどうか。貸与の形態としては、特区の自立のインセンティブをも考慮してグラント(補助金)、エクイティ(資本金的貸付)とデット(貸付金)を適切な割合で組み合わせることが有効であるように思われる。必要があれば、特区はこの貸与金や徴税権をベースに債権を発行してもいいだろう。

 以上のように考えれば、特区的手法をそれこそ「最大限に」活用した1国2制度案は、復興のワイルドカードとして十分検討に値するのではないだろうか。


(文中、意見に係る部分は全て筆者の個人的見解である。)