「赤字補てんアプローチ」ではなく
「改革アプローチ」で

 社会保障・税一体改革の中で、「2015年度までに消費税率を10%まで引き上げる」ということの政府・民主党の決定が難航している(執筆時点)。しかし、今後内閣が代わっても、よほどのことがない限り、「2015年度までに消費税率10%」という基本ラインは変わらないだろう。

 なぜなら、わが国の将来にとって、もう少し政府の規模を大きくし、ほころびつつある社会保障を再構築し、同時に財政再建にむけて道筋をつけることの必要性や重要性は変わらないからだ。

 消費税率の引き上げ・税制改正の具体的時期については、「経済状況の好転を前提として」という文言が追加され、「平成23年度(2011年度)中に必要な法制上の措置を講じる」となっているので、今後秋口から、消費税率引き上げの「幅」と「タイミング」に議論の焦点が移っていく。

 私は、消費税引き上げに対する対応が、今後の政界再編につながっていくことを、第5回の本欄で書いた。実際今回の社会保障・税一体改革・消費税率引き上げに関する議論を見ていると、単に政治パフォーマンスというより、個人の信条として、経済成長やさらなる歳出削減により増税は不要という政治家もいるので、それは一つの考え方として、今後政策集団を形成していくべきではなかろうか。そうなってこそ、世界の先進国の大部分がなっているような、「親切・増税党」と「冷淡・軽税党」の2つに分かれ、国民の意見を代表した中身のある政策議論が可能となる。

 さて、多くの国民は、国会議員削減や地方公務員給与の引き下げなど、残された歳出削減を行いつつも、近い将来は消費税率の引き上げはやむをえないと考えている。もっとも、国民の納得を得るためには、消費税率引き上げは、足りない財源を補うという「赤字補てんアプローチ」ではなく、社会保障改革と連動した「改革アプローチ」(このように改革するためには財源が必要)で進める必要がある。