「政権を本気で倒しに来る」
際立つ財務省への敵愾心
安倍晋三元首相が内政・外交にわたってインタビューに答えた『安倍晋三 回顧録』(中央公論新社)は、内容があまりに機微に触れるとして一度本人から「待った」がかかったと、聞き手が前書きで述べている。
筆者もその内容があまりに赤裸々でかつ感情的なのには驚かされた。
とりわけ際立つのが、財務省への反感、敵愾心の強さだ。
回顧録には、「財務省の策略」「夏の陣(軽減税率の導入を巡る14年の議論)」「冬の陣(軽減税率の導入を巡る15年冬の議論)」といった戦闘モードの表現があちこちに出てくる。
いずれも「政権を平気で倒しに来る」財務省への反感だ(安倍氏の言葉を本から引用した部分は「 」でくくった)。
率直な感想として、一国の首相が、内閣を構成する一省庁で予算をつかさどる財務省に対して、ここまでの反感や敵意を持つことは、どちら側に原因があるとしても、国の統治や危機管理という観点から看過できる問題ではないと思った。
なぜここまで財務省を安倍元首相が嫌ったのか。