高齢者人口の急増を見据え、2000年に始まった日本の介護保険制度。多くの高齢者や介護する家族を救ってきたが、生産年齢人口の減少で財源は減る一方、認知症患者700万人時代到来といわれるように、当面需要は高い状態が続く。特集『決定版 後悔しない「認知症」』(全25回)の#16では、制度維持のための処方箋を、厚生労働省在職時代、介護保険創設に携わった上智大学の香取照幸教授に聞く。(聞き手/ダイヤモンド編集部 野村聖子)
“介護は家族で”固定観念を変えた介護保険だが
認知症へのアプローチは道半ば
介護保険制度は高齢者の自立支援や介護の社会化など、それまでの高齢者福祉の考え方を大きく変え、「介護は家族で背負うべき」という固定観念を払拭して価値観のパラダイムシフトを起こした。
制度創設から20年、社会経済が大きく変化する中で、さまざまな改革を重ねつつも基本骨格を変えず維持されている。介護保険制度の先見性・革新性は評価されていい。
他方で今後、取り組みを強化しなければならない課題もある。その第一は認知症対策だ。身体介護モデルから認知症モデルへの転換がいわれてきたが、取り組みはいまだ十分とはいえない。
認知症に対する取り組みは現場の実践の中から生まれてきた。認知症グループホーム(認知症対応型共同生活介護)も小規模多機能型居宅介護も、現場の実践の中から生まれ、介護保険はそれを拾って制度化したにすぎない。