東日本大震災からの復興策を検討していた復興構想会議(五百旗頭真議長)は、6月25日、4章から成る「復興への提言」を最終決定し、首相に答申した。菅首相の退陣表明により、当初考えられていた第一次提言ではなく最終提言となった模様である。その提言要旨は各紙に掲載されているので(例:日経2011.6.26朝刊。以下、引用は同紙による)、ぜひ丁寧に読んでみてほしい。私は一読した限りにおいてであるが、コンセプションとしては十分及第点が与えられる内容だと思った。
まず「逃げる」ことを考えよ
提言の「第1章 新しい地域のかたち」では、冒頭で(防災ではなく)「減災」という考え方を強く打ち出している。平たく言えば、津波に対しては、まず「逃げる」ことを考えよということだと理解した。
今回の大震災でも大地震の発生と大津波の発生との間には平均して30分前後のタイムラグがあったと報道されている。多額の資金を注ぎ込んで防波堤や防潮堤を再建したとしても想定外の津波にはとうてい対処しきれない。大自然の猛威に対する基本的な考え方として、従来の「防災」理念を「減災」理念に転換したことは高く評価されて良いと考える。
また被災地域を5つの類型に分別し、地域モデルごとに復興施策を提示している点も分かりやすい。当然のことではあるが、復興の主体を「住民に一番近い市町村が基本」と明記したことも評価されて良いだろう。特区についてはやや物足りないが、その点は前回のコラムで詳述したのでここでは触れない。
財源を次の世代に負担させるな
「第2章 くらしとしごとの再生」では、農林業の高付加価値化、低コスト化、農業経営の多角化や水産業の企業との連携、特区の活用等を提言している。いずれも国際競争力の強化を強く意識した提言だと受けとめられる。