第4章は「開かれた復興」について述べられている。この章では「世界に開かれた経済再生」の部分が最も重要だと考える。提言は「国際的にも魅力的な環境を整備することにより、国際的な企業がわが国に研究開発拠点やアジア本社機能を設置することを促進」と明記している。

 例えば、大震災前ですら、わが国は国際的な企業のアジア本社機能の誘致については、香港やシンガポールに劣後していた。大震災後はこれに風評被害という新たなハンディが加わったのである。わが国がこのハンディを跳ね返して香港やシンガポール(この他に上海や北京、ソウルといった強敵が待ち構えている)と互角以上に戦って行くことは決して容易なことではない。

 その困難さを百も承知で、提言がわざわざ1章をこの問題に割いたということは、国を開かなければこの国の未来はないという強い危機感に迫られてのことであろう。この危機感こそ市民全体でぜひとも共有したいものである、と考えるのは果たして筆者だけであろうか。

新首相の最初の仕事は復興財源の確保から

 復興構想会議の提言は、復興基本法に基づいたものであり首相が交代してもその重みが薄れることはない。菅首相が退陣を表明した以上、この提言を具体化し実現するのはおそらく新首相の最初の仕事になるだろう。提言は多岐にわたっておりすべてを同時に着手することはできない相談である。そうであれば、優先順位をつけて後は断行するしかない。仏(提言)に魂を入れるのは政治の役割である。そして被災地域の方々が何よりも強く望んでいるのは、提言の速やかな「実行」であると考える。

 私見では、やはり復興財源の確保が何よりも重要であろう。無い袖は振れないのである。新首相には提言の趣旨に沿った復興財源の確保についてまず明確な道筋をつけてもらいたいと考える。

 その次に取り組むべきは、第一原発の収束、特区を活用した大胆な「1国2制度(規制緩和・地方分権)」と国を広く世界に開いて世界の成長エネルギーを広くわが国に取り込むことであろう。


(文中、意見に係る部分はすべて筆者の個人的見解である。)