復興構想会議が提唱した復興構想7原則の中にも「日本経済の再生なくして被災地域の真の復興はなく、大震災からの復興と日本再生の『同時進行』を目指す」とうたわれていたので宜なるかなである。また、「復興に必要な各種施策が展開できる、使い勝手のよい自由度の高い交付金の仕組みも必要である」と述べられている点も大いに評価したい。

 しかし、こういった新しい交付金を実現するためにも、先立つものはまずお金(財源)である。提言は復興のための財源確保について「財源は次の世代に負担を先送りすることなく、今を生きる世代全体で連帯し、負担の分かち合いにより確保しなければならない」と明言した。このように真正面から臨時増税を提言したところが、今回の復興構想会議提言の背骨であると考える。市民の多数も、これ以上の負担を次の世代に先送りすることには無理があるという点についてはおそらく異論がないだろう。

わが国の置かれた状況を直視しよう

 ここで16年前の阪神・淡路大震災と今回の東日本大震災の経済環境を比較してみよう。 

  東日本大震災 阪神・淡路大震災
発生年月 2011年3月 1995年1月
被害額 16兆9000億円
(内閣府推計)
9兆6000億円
(国土庁推計)
名目GDP 479兆円 489兆円
国と地方の
長期債務残高
869兆円
(名目GDPの181%)
368兆円
(名目GDPの75%)
65歳以上人口 2958万人
(全人口の23%)
1759万人
(全人口の14%)
社会保障給付費 105.5兆円 60.5兆円

 少子高齢化(65歳以上人口は1,199万人増加)、財政の悪化(国と地方の長期債務残高は501兆円増加)、国際競争力の低下(名目GDPは10兆円の減少)という3つのわが国の構造問題が顕著に現われている。人間は見たいものしか見ない、あるいは見たいようにしか世界を見ない動物であるとよく言われているが、私たちは決して目を背けることなくこの現実を素直に直視すべきである。