にもかかわらず、日本から派遣されてきた社員は、工場内で特別待遇を受けている。それも「会社の財政状況を悪化させた原因の一つだ」と中国人社員は指摘する。

 例えば、日本人社員は通常、工場の部門マネージャーを担当しており、工場側は毎年100万元にものぼる報酬や各種手当を支払っている。

「技術部門に一人、日本人のマネージャーがいるのですが、毎月の給料は約2~3万元です。彼は、奥さんとお子さんを連れて中国に来ているのですが、うちの会社は彼らが住む3LDKの部屋の家賃を払い、3人のお子さんのインターナショナルスクールの学費、月3万元も払っています。子どもが病院にかかったときの費用も会社持ちです。他にも毎年1~2回、一家で日本に帰省する際の飛行機代も負担しています」

フォックスコン幹部との初会合で
帰国を心配するシャープの社員

 台湾のフォックスコンに買収されたシャープの社員も俎上に載せられている。

 シャープを迎えるにあたって、フォックスコンの郭台銘会長は10億元以上の費用を拠出し、フォックスコン龍華工業団地の近くに、以前の古いオフィス棟とは全く異なる新しいスタイルの研究開発センターを建設した。その敷地面積は1万m2以上と広大だ。

 これは、フォックスコン工業団地で初めて、単独のブランド製品を開発するために建てたもので、研究開発からデザイン、サンプル製作、試験生産に至るまで一連のプロセスを行うことができるようになった。

 このセンターには、「BCSチーム」と呼ばれる郭台銘フォックスコン会長の特殊部隊が送り込まれた。シャープの白物家電部門の形勢を逆転するためだ。このチームは、製品デザインの分野で有名で、これまでもフォックスコンのトップレベルのブランドをデザインしてきた。

 2016年のある金曜の午前中、フォックスコンとシャープが台北で初顔合わせをした。フォックスコンBCSチーム副総経理の李国瑜氏は、このときのことを鮮明に覚えている。それぞれ慌ただしくやってきた初対面の二つのグループが、会議テーブルに分かれて座り、緊張とばつの悪い空気が流れていたという。