自動車業界は“ラストリゾート”だ──。米アップルなどのハイテク企業に代わって、自動車・部品メーカーが狙われた。特許を盾に賠償金を得る「パテント・トロール」の標的になっているのだ。(「週刊ダイヤモンド」編集部 浅島亮子)
「ついに、自動車業界にも来たか──」。ある自動車メーカー幹部は、警戒モードに入った。
5月1日、トヨタ自動車やホンダなどの自動車・部品メーカー25社が米企業の電動モーターの特許を侵害しているとの訴えを受けて、米国際貿易委員会(ITC)が調査をスタートさせたからだ。
訴えたのは、インテレクチュアル・ベンチャーズ(IV)なる米企業である。知的財産関係者の間では知らない者はいない存在だ。
というのも、知財業界では、IVは「パテント・トロール(特許の怪物)」──自身が保有する特許権を盾にして、大企業からライセンス料や賠償金をせしめる企業──として認識されているからだ。
これまで、米アップルや米グーグルなどのハイテク企業が、パテント・トロールの標的となり特許侵害訴訟に巻き込まれるケースが目立っていたが、ついに、自動車業界が餌食になった。
今回、IVがやり玉に挙げたのは、日独の25社に上る。その内訳を見ると、トヨタグループ12社、ホンダ6社、日本電産2社、ミツバ2社の合計22社と、ドイツ勢のBMW3社。いかに、日系メーカーが狙い撃ちされているかが分かるだろう。