「日本経済は二番底に陥るのではないか」と、巷には相変わらず悲観的なムードが漂っている。だがそんななか、局所的ではあるが好況にわく企業もある。京都の清水寺が毎年発表する「今年の漢字」が“新”だったことにちなみ、2009年の消費トレンドを振り返りつつ、新しい試みで成功を収めた商品・サービスの事例を振り返ってみよう(取材・文/友清 哲)

 京都・清水寺が毎年選定する「今年の漢字」は、“新”であった。この世相ならば、さぞや景気の悪い文字が揮毫されるものとタカをくくっていたが、1年の終わりにこうしたポジティブな漢字に衆目が集まるのは、やはりいいものだ(もっとも、猛威をふるう「“新”型インフルエンザ」にかけたというニュアンスもあるらしいが)。

 さて、「来年は二番底」――などという声も聞かれる日本の経済動向は、依然として不安要因で満ちている。そこで今回は、清水寺の「今年の漢字」に倣い、悪い部分よりも良い部分に着目してみたい。

 手あかの付いた文言ではあるが、不況下にも業績好調な企業はちゃんとある。好調な企業を象徴するキーワードを漢字で表すなら、まずはなんと言っても“安”だろう。

 大手企業の今冬のボーナスは、前年実績比でおよそ15%も減った(日本経団連発表)。これは過去最大の減少幅だというから、穏やかではない。つまり、消費者は金がないから安い商品に手を伸ばす。これは、自然というより「必然」だ。

安かろう、良かろうが「新」!? 
「今年の漢字」から読み解く消費動向

ユニクロの姉妹ブランド「g.u.」(ジーユー)の990円ジーンズ。アパレルの王者が満を持して投入したこのブランドは、あっという間に「3ケタジーンズ」と呼ばれる新たな人気市場を創り上げてしまった。

 そうした市場傾向を最大限に追い風とし、躍進した企業の筆頭格は、アパレルブランド「ユニクロ」でおなじみのファーストリテイリングだろう。

 ここ数年の活況の波に乗り、とうとう姉妹ブランドの「g.u.」(ジーユー)から「990円ジーンズ」が飛び出したのは周知の通り。単なる低価格ブランドというイメージを脱却し、人気カジュアルブランドとして認知された上での「決め球」だ。今秋にはたちまち他ブランドを巻き込んで、「3ケタジーンズ」と呼ばれる市場を創り上げてしまった。