白目が白いのはヒトだけ!?

「白目が黒い」とは変な表現です。ヒトの白目にあたる部分は「強膜(きょうまく)」と呼ぶので、「なぜサルの強膜は黒いのか」と言い換えましょう。

 ゴリラもチンパンジーもすべてのサルの強膜は、小ザルの頃を除けばかなり濃い茶色をしています。黒目も含めれば、サルたちの眼は全体的に黒いのです。いったいなぜなのでしょう? これでは「視線によるコミュニケーション」はとれません。

 サルの眼は、多くの魚や鳥のように頭の左右に付いているのではなく、正面に両眼が付いています(*6)。このお蔭で立体視ができ、対象までの正確な距離がわかります。森の中、樹上で生きていくには、それが必須だったのでしょう。そうでなければ高木の上(*7)で、枝や果実を正確に掴めません。それは命に関わります。

 その代わりに視野が狭いので、広域をスキャンするには体や首を回すか、眼球だけを動かさなくてはいけません。でも、強膜が白くてはマズいことがあるのです。特に、より強い相手(=捕食者、抗争相手)と遭遇したときに。

 強膜が白くてはマズいこと、それは「視線がバレる」ことなのです。

 視線によって、相手に自分の次の行動がわかってしまいます。逃げようとしているのか、襲おうとしているのか。どこに逃げるのか、どこを攻撃するのか。視線がバレて良いことはひとつもありません。

 生き残るために、敵との戦いを有利にするために、「すべてのサルの強膜は黒い」のです。

 ではなぜヒト「だけ」が、その強膜を白くしたのでしょうか?

なぜヒトの強膜だけが白くなったのか!

 ヒトはおよそ200万年前、木を降り森を出てサバンナで生きることを選択しました。でも「地上に降りた、か弱きサル」であったヒトに、単独で敵(ライオンなど)と戦うという選択肢はありませんでした。

 ヒトの最大の武器(*8)は、頭脳を使った仲間との連繋プレーでした。素早い情報交換のために、そのコミュニケーション能力を発達させてきました。そのひとつが「視線」であり「目の表情」だったわけです。

 ヒトの白目が白いのは、文字通り「目にものを言わせる」ため。そしてそれは、力やスピードでなく智慧で戦うことを選択した、ヒトという霊長類の特殊な武器だったのです。

*6 フクロウなどの猛禽類も同じ。
*7 多くのサルは地上性ではなく、樹上生活であり地上から数十メートルの高さで普段を過ごしている。
*8 ヒトは発汗能力に優れ、高温下でも日中、長時間活動できるという特長もある。これによって「ただ追い続ける」という狩猟法を採っていた、とか。