7月11日(月)に、「イタリア・ショック」が世界の金融市場を駆け巡りました。これにより、欧州の信用を示す各種指標は、一気に「ユーロ危機第3幕」と言えるような動きとなりました。

 ただ、今のところは、世界の金融市場の「恐怖度」を示す「VIX指数」の上昇は抑制されています。 その意味では、金融市場への示唆は「世界同時株安」ではなく、あくまで「ユーロ一段安」ではないでしょうか?

イタリア・ショックで一気に「ユーロ危機第3幕」に突入した

 たとえば、欧州全体に対する信頼感を示す「欧州CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)指数」を「資料1」で見てみましょう。

資料1

 

 昨年6月にギリシャが主役を演じた「ユーロ危機第1幕」ほどではありませんが、昨年末から今年初めにかけて、アイルランドなどが主役を演じた「ユーロ危機第2幕」を上回る信用悪化を見せています。

 ユーロは「危機第1幕」では1.2ドル割れまで、「危機第2幕」では1.3ドル割れまで売り込まれました。

ユーロ/米ドル 週足

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 当時と比べると、ユーロの中核金利であるドイツの金利水準が高くなっているために単純には比較できませんが、それにしても、「危機第2幕」以上の信用悪化となる中で、1.4ドル台で推移している足元のユーロは、その割高が試される可能性はあるでしょう。

 昨年6月にかけての「ユーロ危機第1幕」では、「恐怖指数」とも呼ばれる「VIX指数」も急騰しました。ユーロ危機が単に欧州域内の問題にとどまらず、米国株も急落させ、世界中にリスク回避をもたらしたのです。

 そんな「VIX指数」ですが、今のところは、上昇は限られたものになっています。「資料2」をご覧ください。「第1幕」と「第2幕」においてピークをつけた水準を、この原稿を書いている7月12日(火)時点では大きく下回っています。

資料2

 

 もちろん、もう数日は様子を見る必要はあるでしょうが、この背景には、世界の金融市場が「ユーロ危機」に慣れてきたということがあるのではないでしょうか?

 このまま「ユーロ危機第3幕」でも「世界同時株安」とはならず、世界的にリスク回避の動きが広がらないようならば、金融市場の反応としては、欧州からのキャッシュアウトによる「ユーロ安」が主役になるのではないでしょうか?

米国の債務上限引き上げで合意できなければ、どうなる?

 続いて、この8月に1つの期限を迎える予定である「米国の債務上限見直し」の問題にも少し触れてみたいと思います。米国債のデフォルト(債務不履行)懸念の問題が、どれだけ米国の景気と米ドルの楽観シナリオに水を差すかについてです。

 この問題は、これまでもたびたび取りざたされてきたのですが、今回とりわけ注目を集めているのは、中間選挙以降の野党・共和党の強気の姿勢が変わらず、歳出削減策をめぐる民主党と共和党の歩み寄りが一向に見られないということが大きいでしょう。

「チキンゲームのまま、期限内に合意できない可能性はゼロではない」との警戒感もくすぶっているのです。

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