行政に「標準世帯」を勝手に決めて欲しくないと思う方も多いだろう。私もそう思うのだが、生活保護基準には、まず「標準○人世帯」の「健康で文化的な最低限度」の生活費として計算され、他の形態の世帯・年齢層などに展開されてきた歴史がある。

 今回、厚労省が示したのは、この「標準3人世帯」に加え、高齢者単身世帯をモデル世帯として新たに追加し、その両者から生活保護基準を決めていくという方法を採用する方針だ。背景には、生活保護世帯の中での高齢者世帯の増加、その中でも特に単身世帯の増加が著しいという状況がある。「最多の類型そのものの生活費を計算する」という方針は、一見もっともらしい。

 しかし高齢者単身世帯は、2006年の老齢加算廃止により、現在の生活保護世帯の中で消費を最も低く抑えられてしまった世帯だ。この方針のもとで実際に行われるのは、高齢者単身世帯の生活費から「標準3人世帯」の生活費を低めに計算し、さらに児童の養育費用、ひとり親であることによる費用の増加を低めに見積もることではないだろうか。

 児童を養育していること、ひとり親であることに関する費用の増加が存在することは、厚労省も全否定はしていない。しかし今回の基準見直しに関しては、示された資料だけでも、「生活保護費は子どもや子育てに手厚すぎる」「特にひとり親世帯に対して手厚すぎる」という結論を導きたい意向が丸見えだ。

 もしかすると、子どものいる世帯、特にひとり親世帯(2009年以後、母子加算は父子家庭も対象)に対して、生活費本体を引き下げた上で「色がつく」程度の加算を行い、母子加算が完全に消滅した場合と同じ金額を導く結論が、すでに用意されているのかもしれない。

 さらに、自民党政権にとって忌々しいであろう「母子加算」という名称が、「そうは言っても、ひとり親の生活保護世帯は大変なんじゃないか」という感情を引き起こしにくいものへと変更され、「母子加算」そのものが消滅するのかもしれない。

海外の人々に対して
「日本は恥ずかしい」と思いたくない

本連載の著者・みわよしこさんの書籍『生活保護リアル』(日本評論社)好評発売中

 国や社会の成熟度を示すものの1つは、「最も弱い立場に置かれがちな人が、どう扱われているか」だと私は考えている。

 ともあれ私は、直接知る生活保護世帯の人々、特に子育て中の親たちや生育真っ最中の子どもたちが不幸になる近未来を見たくない。日本が現在以上に社会的・経済的に弱い人々を痛めつける国となるところも見たくないし、海外の人々に対して「日本は恥ずかしい」という思いも抱きたくない。

 そのためには、微力なゴマメの歯ぎしりのような記事化を、地道に続けていくしかなさそうだ。