2年の旅で出会った
無数の「チェンジメーカー」たち
旅の中では、水商売で働く女性たち、売春婦、タクシーの運転手といった人たちとよく話した。貧困層の実態を一番よく知っているのは彼らだと思う。彼らが暮らす国では、多民族国家ゆえ、ど田舎から出てきても言葉がちゃんと通じないことや、出てくる途中で仲介人にこき使われて搾取されたり、役人にまで賄賂を要求されたりすることもまだまだ多い。そのような環境で、前を向いてちゃんと働いているというのは、本当にすごいことだと改めて思う。
書籍では描ききれなかったことで、この【取材紀行編】で伝えたかったことは、食堂のおっちゃんにおばちゃん、タクシーの運ちゃん、水商売のお姉ちゃん、売春婦。そんな人たちが、ちょっとしたきっかけで世界を変えていくのだ、という旅を通して肌感覚で得た実感だ。
取材が終わったいま、第4回で触れた沈東曙――いや彼だけではなく、今回取材した起業家たちすべて――は、きっと彼らのような人たちのパワーや可能性に突き動かされているのだ、ということがわかる。
そして、そんな途上国の人々が日々あくせく働いても越えられない壁を、日本にいる僕らはほんの少しアルバイトするだけで越えられる。彼らが直面する壁というのは、たとえばより高度な教育を受けるということや、出稼ぎに行くための交通費、また誰かが病に倒れた時に適切な医療を受けることができるということだ。そんな僕らは彼らと一緒にどういう世界をつくっていけるのだろうか。