命をかけて、人を信じ続けたい

  たび重なる恫喝に、スタッフはおびえきっていました。
  でも、このホテルを守ろうとする一心で、がんばって踏みとどまっていました。

  私はスタッフを守り、お客様を守るために、とにかく体を張るしかないと思ったのです。ヤクザには出ていっていただき、安全、安心、清潔なホテルをスタッフと一体となってつくりあげてきました。

  いまは、もう怒鳴りこんでくるヤクザはいません。
  それどころか、お客様の車が入れない場所に駐車してあった車も、あっという間に移動させてくれるようになったのです。

  私は、仕事でお泊まりいただくことはご遠慮いただいていますが、人間として決してヤクザのみなさんとケンカをしようとしませんでした。

「きっと、わかってくださるはずだ」
  その一心だったのです。
  おもてなしとは、命を張ること。

  普通であれば、この両者が結びつくはずもありません。

  なぜ、私がそう断言できるかというと、究極の命をかけてまで人を信じて対応することからきているのです。
  確かに、これまで3度ほど命を落としかけました。でも、警察の人に助けられてこうやって生きています。

  そして、いまはヤクザの方々も仁義を切ってこのホテルには近づかないでいてくれます。命をかけても、人を信じるだけのことはあったと、私はいまも思っています。

  私はこれからも、命をかけて人を信じ続けていきたいと思っています。

 

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【著者】三輪 康子
新宿歌舞伎町にある有名ホテルグループに勤める現役支配人。グループ内で過去何度も「売上日本一」となる。2010年度MVP賞受賞。日本一のクレーマー地帯で先頭に立って部下を守りながら、モンスタークレーマーを体当たりで受け止め、次々ファンに変えた伝説の名物支配人。青森県生まれ。ホテル業界未経験ながら、着任当初、ヤクザ、売春婦、薬物密売業者などが徘徊していたホテルを粘り強い交渉と人情で、安全で清潔なホテルに生まれ変わらせた。その功績が認められ、警察から「歌舞伎町のジャンヌ・ダルク」と尊敬をこめて呼ばれ、感謝状が贈られた。本書が初めての著書。