発売早々重版となった『日本一のクレーマー地帯で働く日本一の支配人』を書いた「歌舞伎町のジャンヌ・ダルク」こと三輪康子支配人が、数々のモンスタークレーマーとの闘いからクレーム対応の極意を語る連載企画第4弾。最終回となる今回は、無縁社会が叫ばれて久しい昨今、歌舞伎町という一見絆とは縁遠い街に、一筋の光を求めて、街とともにホテルを切り盛りする著者の「心からのメッセージ」をお届けする。

当初、警察からも見捨てられた「歌舞伎町のジャンヌ・ダルク」

  私は、新宿警察署のみなさんから親しみをこめて、「歌舞伎町のジャンヌ・ダルク」と呼ばれています。
  何の後ろ盾も持たない女性が、たった一人革命を起こしたことからこの名がついたそうです。

  でも、警察と私、最初の印象はお互いに最悪でした。

  のちに、私を「同志」と呼んでくれるようになった警察官は、着任の挨拶に電話をかけた私に向かって、
「あそこは、ヤクザとつるんでるホテルでしょ。挨拶に来なくていいから」
  と、言い放ったのです。
  カチンときた、私は思わず啖呵を切っていました。
「これからの私を見ていてくださいっ!」

  でも、確かに警察の言っていたことはそのとおりでした。
  もう辞めてしまった従業員のなかには、ヤクザの女になってしまった人もいたのです。
  でも、誰が責められるでしょう。恫喝されたときの精神状態は普通ではありません。
  あまりの恐さのなかで、コントロールを失っていったのでしょう。

たび重なる不法駐車に「署名付き貼り紙」で対抗

  私はそれから、こつこつと問題の解決を図り始めました。
  なかでも、格闘していたのが不法駐車です。
  毎日、毎日、お客様の駐車場に不法駐車している車がいて、私はそのたびに、「駐車禁止」の貼り紙をしにいきました。
  きちんと私の署名も入れました。私がやっていることでスタッフに危害が及ぶのを防ぐためです。

  車の持ち主の怒りはすさまじいものでした。