「待って~」
タクシーは、心なしかスピードを上げているように見えます。
なぜか、私がヤクザを追いかけ、ヤクザが逃げるような格好になっていました。
やっと私の振りまわす携帯に気づいたのか、弟分はタクシーを止めて、しぶしぶ携帯を受け取りました。
その弟分は、姐さんに対して、この一件についてこう話したのだそうです。
「俺は、いままであんなに怖い目にあったことはない」
ある日、歌舞伎町商店街の「歌舞伎町未来会議」という集まりがあり、そこでお話しさせていただく機会がありました。
そのなかで、「三輪さんにとっておもてなしとは何ですか?」という質問がありましたので、私はこう答えていました。
「おもてなしとは、命を張ること」
「おもてなしとは、命を張ることです!」
みなさん、苦笑されていましたが、私は本気でそう思っているんです。
私がこのホテルに支配人として着任したのは2004年。それまで私は、ホテル業界とは縁もゆかりもない仕事をしていました。
それが転職でいきなりホテルの支配人に大抜擢され、最初に着任したのがここ歌舞伎町の大型ホテルでした。
しかし、一歩足を踏み入れて驚きました。最上階はヤクザが長期占有、ロビーではヤクザがゴロゴロくつろいでいます。汚水槽はというと、何に使ったのか、注射器の針がプカプカ浮いていました。