ついに、組の姐さんがやってきた!
そんなことを繰り返していたある日、ある女性がフロントに私を訪ねてきました。
誰なのかと聞くと、ある組の姐さんだというのです。
どんな用件なのかと思ったら、なんと私がどんな人間なのか顔を見にきた、というのです。そして、まったく私の言い分など聞かずに、彼女はこうきっぱりと断言しました。
「あんたのバックには絶対大物がついている!」
「え?」
驚きました。もちろん私の後ろには何もついていません。ヤクザどころか、何のコネもないのです。
「あの~そんなものはついておりませんが」
「いいや、しらばっくれてもダメだよ。それほど度胸があるのは、絶対に後ろ盾があるからだよ!」
「そんなものはございません!」
実は、この姐さんの弟分という人が、私のホテルのお客様だったそうなのです。
この弟分という方は、過日、当ホテルに大量の偽造免許証を忘れていかれました。
弟分はそれに気づいて、大あわてでホテルに取りにいらっしゃったのですが、私はすでに忘れ物として警察に届けたあとでした。
私がヤクザを追いかけ、ヤクザが逃げる!?
「なんで、警察に届けんだよっ! とっとと警察に行って取ってこい!」
「お客様、あれはどう見ても違法な免許証です。もし、どうしても取り戻したいのならご自分で取りに行ってください」
「なんだと、お前が勝手に届けたんだろうがぁ。さっさと取ってこい!」
しかし、私は断固として「NO」と言い続けました。
すると、恫喝してもちっとも怖がらない私を見て、何を勘違いしたのか、急に怖くなったようです。
大急ぎで当ホテルを出ると、タクシーに乗り込みました。
すると、その人が今度は携帯を忘れていることに気づいたのです。
私は、大あわてで携帯を持ってタクシーを走って追いかけます。