ヤフーの「1on1」が、人事の領域で関心を集めている。1on1とは、正しくは「1on1ミーティング」といい、原則として毎週1回、30分間、上司が部下と対話するという制度である。この制度導入の仕掛け人である、本間浩輔・ヤフー上級執行役員がヤフーの人材観について語る。

組織と働く個人の関係性を見直す

 人材育成の手法としてヤフーが実施している「1on1」は、業種を超えて多くの企業が注目しており、導入を試みる企業も少なくなありません。しかし、おそらく定着させることが簡単ではなく、まずはその根底にある人材に対する「思想」を理解することが必要です。今回は、ヤフーの人材観について紹介します。

 かつて、日本企業の多くに「キャリアは会社が決めるもの」という常識がありました。今もそうした人材観を持つ企業は少なくないかもしれません。

 私自身にも経験があります。新卒で入社したシンクタンクでは、人事異動は完全に会社都合であり、個々のキャリアについて働く人の意思が反映されることはまったくありませんでした。

「本間さんのキャリアは会社が考えてくれるんだから、仕事の好き嫌いなんて言っちゃだめだよ」と言われたこともあります。
 
 しかし、バブル崩壊と長い低成長時代を経て、経営を巡る環境は大きく変わりました。会社の言う通りにやっていれば雇用も賃金も保証する、という時代ではありません。その意味で、企業は社員の「キャリア自律」を促す必要に迫られています。

 そのようななかで、ヤフーは社員の「才能と情熱を解き放つ」ことで成長しようと考えています。「キャリア自律」も促します。そのために上司がすべきことは、部下が活躍する舞台を整えることで、1on1はそのためのコミュニケーションの場でもあります。