「お客様のお間違いではありませんか? 当ホテルには盗みを働く者などただの一人もおりません」
MVP賞受賞の瞬間と「日本一のスタッフ」の涙
そんなことを言われると思わなかったお客様は泡を食うようです。
「お、お前、客とガイジンどっちを信じるんだよ!」
私は即座にこう言います。
「もちろん、スタッフです。お客様。もしお疑いのようでしたら警察をお呼びください」
もちろん、私の部下がいままで盗みなどの不祥事を起こしたことはありません。
しかし、スタッフたちは私の想いをちゃんとわかってくれていました。
やがて、みずから冷静に、クレームにも対応してくれるようになったのです。
「私はこのホテルを絶対にやめません!」
そう言ってくれるスタッフも現れるようになりました。
本当にありがたかったです。
そして2010年、グループNo.1の売上と、スタッフ一同の団結力によって、私は全国展開しているこのグループホテルで、MVP賞をいただけることになったのです。
スタッフたちが私に取らせてくれた賞でした。
でも、私がその賞を取ることが決まって、真っ先に泣いて喜んでくれたのはスタッフたちだったのです。私の受賞に先だって挨拶に立ったフロントスタッフは泣きながらこう叫びました。
「私は三輪支配人が大好きです!」
賞をいただいたのはもちろんうれしかったです。
でも、なによりも私がうれしかったのは、スタッフ一同が、私の受賞をわがことのように喜んでくれたことでした。私はスタッフに恵まれている。
日本一は私ではありません。スタッフたちが日本一なんです。
ところが、受賞の喜びが冷めやらないうちに、私にあるできごとが起こります。