みんなが社内SNSを使いたくなる環境を
つくる方法

 ただ、そうしたTalknoteを使った社員同士の密なコミュニケーションは、「一朝一夕にできるようになったものではない」とも齊藤さんは言います。

 実際、Talknoteのようなコミュニケーションツールを飲食店に導入する場合、もっとも難しいのが、「みんなに使ってもらうこと」です。

 私が現在代表を務めるトレタのようにITサービスにかかわる会社であれば、SNSを通じた社員同士のコミュニケーションは日常的で当たり前な行為だと言えます。しかし、飲食業界の人にとっては必ずしもそうではありません。

 これまでSNSを使ったことがない人にトップダウンで「社内SNSを導入したので、何でもいいから投稿するように」と指示したところで、当人にしてみれば何を書き込んでいいのかわからないし、そもそもSNSでコミュニケーションをする習慣がないので、なかなか日常的に使ってみようという気持ちにはならないものです。

 自分が見本を示そうと、社長一人が頑張って投稿をし続けることもありますが、それはかえって逆効果。ほかの社員はさらに投稿しづらくなり、SNSから遠のくばかりです。

(写真提供:ヴィクセス)

 ヴィクセスでも、初期のころはさまざまな試行錯誤があったようです。

齊藤 「Talknoteへの投稿を完全に義務化してしまうと、社員にとっては負担になりますし、本来の目的である自由な意見交換や情報共有は難しくなります。どうすればみんなを巻き込むことができるのか。それは私たちにとっても大きな課題でした」

 従業員を巻き込むために、実際にヴィクセスが取り組んだことを以下にまとめます。

・とにかくいろいろなグループを作ってみる
 業務上、必要不可欠なものを除いて、たいていのグループは「面白そうだから、こんなのを作ってみました」という個々の社員の思いつきが最初のきっかけだそうです。なかには、グループを立ち上げたものの、あまり盛り上がらず、消えてしまったものも多いといいます。また、実際に運用をしてみて、「このグループとこのグループは一緒でいいんじゃないか」と合体したものもあります。
 現在運用されているグループは、いろいろ試してみた結果、社員たちが「このグループがあると便利だ」「必要な情報のやりとりができる」と感じたからこそ、残ったものなのです。

・ゆるやかなルール決め
 投稿を完全に義務化するのはナンセンスですが、一方で何も枠組みがなければ投稿するきっかけがないという人もいるはずです。そこでヴィクセスでは、負担にならない程度のゆるやかなルール決めをしました。
 たとえば、「ESOLAショーケース共有」というグループは、ESOLA全店に設置されているフードショーケースの写真を毎日アップするためのグループです。開店前にショーケースの写真に撮って投稿するだけなので手間はかかりませんし、その写真がほかの店舗の従業員から評価されれば、担当したスタッフは素直に喜び、「もっとほかの投稿をしよう」という気持ちを自然と醸成することができます。

・リアクションの徹底
 誰かが投稿してくれたら、必ず「いいね!」を押したり、コメントを返してあげることも徹底しました。
特に新入社員が初めて投稿したときは、「ほかの社員の食いつき方は半端ないですよ」と齊藤さん。たとえば、売上日報をはじめて投稿したときには、「初日報、お疲れ様!」「これからも頑張って」などのコメントが数多く寄せられるそうです。

・「いいね!」グランプリの実施
 ヴィクセスでは以前、「いいね!」グランプリというイベントを開催していました。年間を通じてもっとも「いいね!」を獲得した投稿を行なった従業員や店舗を表彰するイベントです。

 こうしたさまざまな取り組みを通じて、みんなが自発的に「投稿したい」「投稿しよう」と思える雰囲気を作り、巻き込んでいったのです。

 また、結果論ではありますが、店舗数が3店舗しかなく、社員同士のコミュニケーションがとれていた早い時期に導入したことも、功を奏したはずです。毎日顔を突き合わせ、親密だった社員同士の関係性を、うまくTalknoteというツールに乗せることができたのではないかと思うのです。

 この考えに齊藤さんも同意してくれました。

齊藤 「開業すぐの何もないところから『Talknoteを使いましょう』となっても、何のために使うのか、どうやって使うのか、目的も方法も何もわからないので、たぶん運用は難しかったと思います。
 弊社の場合、古参のメンバーの間ですでにコミュニケーションの土台ができていたからこそ、『じゃあ、いつもやっていたことをTalknoteに切り替えていこう』というイメージを持つことができました。そこから探り探りでいろいろな方法を試してみて、6年かけてやっと今の状態を作ることができたんです」